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プロ野球の観戦チケット料金の推移

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日本のプロ野球における、球場の入場料(観戦チケットの料金)推移をまとめました。

長嶋茂雄が現役引退した翌年=1975年のプロ野球の内野席料金はわずか515円で、これは現在の物価に換算した場合でもおよそ950円という安さでした。その後チケット料金は徐々に値上がりし、2018年現在では平均4500円程度になっています。

プロ野球のチケットの値段推移(東京地区)
内野席料金 外野席料金 備考
1975年 515円 314円 長嶋茂雄引退(1974年)
1980 872 556 王貞治引退
1985 1175 803 落合博満が初の1億円プレーヤーに(1986年)
1990 1546 1051  
1995 1923 1290 Jリーグ開幕(1993年)
1999 2076 1401  
2006 4175 1775  
2018 4500 2000 (東京ドームでの巨人戦)

ソース:物価の文化史事典(展望社)

このようにプロ野球のチケット料金は値上がりで推移していますが、メジャーリーグと比較すると大幅に安いです。例えば、メジャーで最もチケット料金の高いヤンキースタジアム(ニューヨークヤンキース)の場合、内野席がおよそ200ドル〜(約2万2千円)、外野席でも100ドル程度(約1万1千円)します。更に、ホーム後方やベンチ裏などプレミアムエリアは、800ドル(約9万円)以上という高額になっています。日本のプロ野球と比較すると、チケットの値段は4〜20倍も違います。

この傾向は野球に限りません。例えば、サッカーJリーグ(J1)の観戦チケット料金は、「SS指定席」がおよそ5000円、「サポーターズシート」がおよそ2000円なので、概ねプロ野球と同じ水準です。一方で、ヨーロッパのサッカー観戦チケットは、日本と比較してかなり高額です。FCバルセロナの本拠地=カンプ・ノウの場合、チケット価格は最も安い席でも70ユーロ(約9000円)程度で、VIPチケットの場合は750ユーロ以上(約10万円)と高額です。

この傾向は、音楽のライブや演劇等のチケットでも同様です。庶民にとっては安く観戦できるおで、一見すると良い事のようですが、一方で運営側は利益が取りにくいので、ライブビジネスが海外ほど発展しない原因ともなっています。ホリエモンなどは「日本も富裕層向けのプレミアムチケットで儲ければよいのに・・・」と苦言を呈しています。

球場の観客動員数は増えている〜プレミアム座席が鍵を握る?

かつて、プロ野球は日本で最も人気のスポーツであり、特に巨人戦のナイター中継はほぼ必ず全国ネットでテレビ放送されていました。ですが2000年代に入ると、巨人戦のナイター中継の視聴率が低下していきました。年間平均視聴率は、ピーク時の1983年は27.1%でしたが、2006年には9.6%と初めて2桁を割りました。そして近年では、視聴率の低迷からほとんどテレビ中継されなくなったのです。

全国ネットのテレビ中継が消滅したことや、イチローや松井秀喜や松坂大輔など、スター選手が次々とメジャーリーグに流出した事で「プロ野球はオワコンだ」という口コミも増えました。しかし実は、視聴率の低下に反して、球場の観客動員数は年々増加傾向にあります。観客動員数が実数発表になった2005年(※注)には、セ・パ両リーグを合わせて1992万人でした。それが2010年には2214万人、2018年は2555万人と、着実に増加を続けています。

プロ野球観客動員数
セ・リーグ パ・リーグ セ・パ合計
2005年 1167万人 825万人 1992万人
2010 1230 983 2214
2015 1351 1072 2423
2018 1423 1131 2555

※注;2005年以前の観客動員数は、実数ではなく主催球団の「自称」に過ぎませんでした。巨人の東京ドームなどは、実際の座席数(約46300席)より遙かに多い5万6千人の入場者数と発表されていたほど、大幅に水増し発表されていました。

巨人の観客動員数は、ここ10年程は年間300万人前後で推移しており、ほとんど変化が見られません。一方で、かつては人気の低かったホークス・カープ・ベイスターズ・ファイターズなどが観客動員数を大きく伸ばしています。地域に根ざしたファン作りが実を結んだ格好です。

特に広島カープの観客動員数は、この10年程で約100万人から200万人超へと、驚異的な増加になっています。カープの人気が上がったのは、2016年からのリーグ3連覇の影響も大きいですが、実は2009年に新築した本拠地・マツダスタジアムのコンセプトも関係しています。

マツダスタジアムには、ライト側に独立した2階席「カープパフォーマンス」が設けられています。ここは広島カープの応援団席であり、熱狂的なファンが集う最高の観戦場所となっています。他に、バーベキューをしながら観戦できる特別なエリア「びっくりテラス」や、シートに寝転がったまま試合を見れる「寝ソベリア」など、特別な座席も用意されています。前述のホリエモンが言う所の「プレミアムチケット戦略」そのものです。

またレフト側には、球場の外から観戦可能な「ただ見エリア」もあります。ただ見エリアは球場の案内板にも記載されており、球団公認の無料観戦場所として人気となっています。採算度外視で広島市民に幅広く見てもらう広報戦略と、プレミアム座席でしっかり利益を稼ぐという、両輪が機能した事での成功と言えるでしょう。

プロ野球の観戦チケット料金の推移まとめ
・球場の入場料は徐々に上がっているが、メジャーの水準よりは遙かに安い
・観客動員数は巨人以外の球団は増えている
・広島カープのようなプレミアム座席チケットが鍵になる

前述のヤンキースタジアムでは、2017年にルーキーのアーロン・ジャッジ選手がホームランを量産し始めた直後から、彼の名前をもじった「ジャッジズ・チェンバーズ(裁判官執務室)」という特別座席を設けて話題となりました。ファンはこの座席で裁判官のコスプレをして利用し、ジャッジ選手も本塁打王になった事もあって、大いに盛り上がりました。

海外では、流行に乗って機敏なチケット戦略を取りいれ、利益を上げるのは当然です。実際に日本でも、広島カープの成功例が生まれた訳です。プレミアム座席・特別なチケットを用意することが、大リーグへの選手流出時代に抗う、数少ない生存戦略ではないのでしょうか?

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