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ランドセルが全国的に広まったのは1955年以降の事で、現在ではほぼ100%の小学生が通学に使用しています。小学校はランドセルの購入を義務付けてはいないものの、他のカバンを持ってきたり、兄や姉のお下がりを持たせると、いじめの原因になるため、入学の際は新品を買わざるを得ないのが現状です。
以下の表は、戦後のランドセルの平均価格の推移をまとめたものです。
ランドセルの価格推移 | ||
年 | 価格 | 備考 |
1945年 | 12円27銭 | (終戦直後) |
1950 | 2000円 | 現在の1万7千円相当 |
1955 | 2500 | ランドセルの全国的な普及が始まる |
1965 | 3600 | |
1970 | 6000 | |
1975 | 10000 | |
1985 | 23000 | |
1990 | 33000 | (バブル経済のピーク) |
1995 | 35000 | |
2000 | 35000 | カラーバリエーションの増加(2001年) |
2005 | 31510 | |
2010 | 35400 | A4ファイルに対応した製品の登場 |
2015 | 45000円 |
主要ソース:物価の文化史事典(展望社)
ランドセルの基本的な役割は、1945年から70年以上経った今でも変わっていません。にも関わらず、価格の推移は上昇傾向にあります。1950年当時のランドセルの値段は2千円でしたが、これは現在の物価に直すとおよそ1万7千円になります。その後徐々に上昇し、バブル景気から2000年頃までは3万円程度でしたが、2015年には45000円と1万円程度値上がりしています。
近年のランドセルは、親よりも祖父母が買い与える事が増えています。祖父母は可愛い孫のためにお金を使うのを惜しまない傾向なので、メーカー側が調子に乗ってランドセルを高額にしてきた側面も強いです。少子化の影響で世帯当たりの子供が少なく、1人に使える金額が増加している事も、ランドセルが値上がりしても容認されている理由です。
但し、ランドセルは機能面の進化も進んでいます。その代表が、サイズの大型化です。2000年頃までは、ランドセルにA4サイズのクリアファイルは入りませんでした(少し曲げればギリギリ入る)。それが2001年にイオンがA4サイズのクリアファイルがすっぽり入るランドセルを発売、その使い勝手の良さから、以降は他のメーカーも同様のサイズに大型化したのです。
他に、身体への負荷を減らす技術も導入されています。実は、ランドセルの大型化に伴って重量が増加し、小学生が腰痛になる事例が増えています。教科書はカラーページが増え、見やすいようにサイズも大きくなっていますが、それが重量の増加に繋がっている問題があるのです。また教材を教室に置いておく事を禁止している学校も多く、重い辞書や画材なども毎日持ち運ばなければならないため、身体への負担も大きくなっているのです。
そのため、近年のランドセルは重さを軽く感じられるような対応がされています。例えば、株式会社ハシモトのランドセル「フィットちゃん」は、肩ベルトの構造を工夫して圧力を約半分に軽減しています。そしてセイバンの「天使のはね」は、肩ベルトを立たせて重心を上げる構造になっているため、重さが肩・背中・胸などに分散され、非常に軽く感じられるのです。
ランドセルは、オランダ語で背負いカバンを意味する「ランセル(ransel)」が語源とされています。ランドセルが日本で用いられるようになったのは、江戸時代〜幕末の頃であり、当時は学校ではなく軍事用品として使われていました。ランドセルは両手が自由になるメリットがあるので、軍事用に適しており、その利便性から子供が学校で使うカバンへと発展したのです。
しかし海外の学校では、子供の通学に背負い用のカバンを採用しているケースもありますが、日本と同様のランドセルを使っている国は存在しません。つまりランドセルは、日本独自の子供用通学カバンなのです。
2000年頃までのランドセルの色は、男子は黒・女子は赤というのがほぼ固定でした。それが近年では、青・ピンク・緑・茶・白など、カラーバリエーションが豊富になっている点が特徴です。ランドセルのカラーが増えたきっかけは、イオンが2001年に発売した「選べる24色のカラーランドセル」です。その後は他のメーカーもイオンを追従するようになり、カラーバリエーションが大幅に増えたのです。
実は昔のランドセルが黒と赤だったのは、技術的な問題でした。天然の皮革素材は、発色の関係で自由な色にするのが難しく、黒や赤など一部のカラーしか対応できなかったのです。それが近年では、高性能な人工皮革を作れるようになった事で、使えるカラーバリエーションも広がったのです。
ランドセルの値段が上がり続けている理由として、このように色の増加や機能性がアップしてきたことが、メーカー側の値上げの言い分という訳です。
ランドセルの価格の長期推移まとめ
・ランドセルは祖父母が買い与える事が増えて、平均価格も上昇傾向
・子供の負担軽減のため、軽く感じられるランドセルが人気
・近年のランドセルはカラーバリエーションが豊富
ちなみに、昔のランドセル商戦は秋〜年末に掛けてでしたが、近年はお盆がピークと、かなり前倒しになっています。前述の通り、子供にランドセルの買い与えるのは親よりもおじいちゃん・おばあちゃんが主流になっており、お盆で実家に帰省した際に買ってもらうケースが多いのです。また近年のランドセルはカラーが多様になっており、人気の色が売り切れる前に早めに買っておくという家庭も増えているのです。