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全国の空き家率の推移と将来予測

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近年、東京の不動産バブル(湾岸タワーマンション等の異常な高騰)とは対照的に、全国的に空き家が増加していることが、社会問題として認識され始めています。以下のグラフは、総務省が5年ごとに発表する、日本の空き家率の推移を表した統計です(2018年以降は野村総研による推測値)。左軸が戸数・右軸が空き家率です。

全国の空き家率と将来予測

2000年代に入り多少減ったとはいえ、現在でも年間100万戸近い新築住宅(マンション等を含む)が建設されています。一方で日本が人口減少していく事は確定事項なので、今後空き家率はますます高くなる見込みです。

空き家が増えている最大の理由は、人口減少に反して、住宅メーカーが家を作り続けている事です。積水ハウスも三井不動産も大東建託も、住宅の着工を続けています。不動産業界は家を建てる事で利益を得るビジネスなので、マクロ経済的な需要に関係なく、家を作って売り続けるしかないのですから、ある意味必然とも言えます。とはいえ、日本全体の未来を考えれば、供給が需要を大きく上回っている状況は好ましくありません。

日本は戦後、復興のために新築住宅の建設を推進する政策でした。単に住宅不足解消という意味だけでなく、経済構造の転換(田舎の農林水産業から都会の二次・三次産業への労働力の移行)という側面も担っていました。また新築住宅は経済波及効果が大きいので、マクロ経済的にも有効な政策でした。そのおかげで、日本はGDP世界第二位の「豊かな国」へとに成長しましたが、経済状況が変わった今でも政策転換していない事が問題です。

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アメリカを始め多くの先進国では、政府が新築住宅の供給をある程度コントロールできる政策・規制を取り入れてますが、日本は完全に民間任せで放置している事も、住宅の供給過多=空き家の増加を生む原因です。

空き家が増える別の理由として、固定資産税が安くなる事も挙げられます。日本の法律には「小規模宅地の特例」という制度があり、土地に住宅が建っている場合は、固定資産税が通常の6分の1に減額される事になっています。つまり、使っていない家を取り壊して更地にすると、その費用が掛かるうえに税金まで高くなるのです。そのため、使わない不動産が空き家のまま放置されたり、相続放棄が増えている原因となっています。

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こうした状況に政府は、2015年5月から空家等対策特別措置法を施行し、小規模宅地の特例の適用外措置(固定資産税の優遇がなくなる)も設けられました。市町村も建物の所有者に対して、除却や修繕の勧告・命令を出す事が可能になり、行政代執行として強制的に解体する事も可能になりました。

全国の空き家率の推移と将来予測まとめ
・空き家率は今後更に高くなると予測されている
・空き家が減らない理由は、人口減少なのに新築住宅を作り続けているから
・固定資産税の問題が、空き家の取り壊しが進まない元凶になっている

このように、日本は人口減少が続いているにも関わらず新築住宅が増加しており、また小規模宅地の特例の影響で空き家の取り壊しが進みません。こうした条件が重なって、今後ますます空き家率が高くなる予測なのです。前述のように、住宅業界自身が抑制に動くことはありえません。何らかの新築の制限を掛けて住宅メーカーの淘汰を即す、固定資産税の評価を改訂して空き家の取り壊しを進める、など政府が政策で抑制するしか、空き家率を抑制する方法は無いのです。

 
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