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世界各国のジェネリック使用率の比較

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ジェネリック薬とは、新薬(先発薬)の特許が切れた後に販売される、新薬と同等の成分を持った薬(後発薬)の事です。新薬の開発には、長いと10年以上の時間と、数百億円単位でコストが掛かります。一方でジェネリック薬は、研究開発費がほぼ不要な事や、先発薬が安全性や有効性が実証しているので、安価での開発が可能になっています。こうした事情から、ジェネリック薬は先発薬の半分以下の価格で販売されるものが多いです。

近年の日本では、高齢化に伴って医療費が高騰している事が社会問題になっています。ジェネリック薬は医療費削減の効果があるため、政府も普及を推進しています。しかし世界的に見て、日本のジェネリック普及率は高くありません。以下のグラフは、OECDに加盟する主要国のジェネリック使用率を比較したものです。データはOECDの発表した数値で、日本の厚生労働省が公表している数値とは異なりますが、OECDの方が世界標準です。

世界のジェネリック使用率比較

※データソース;OECD iLibrary

OECDの中で最もジェネリックの割合が高い国はアメリカ(83%)です。ご存知の人も多いでしょうが、アメリカは日本と違って国民皆保険制度がありません。そのため、医療費は日本よりも遥かに高額になり、病院に行きたくても行けない医療難民も大勢存在します。故にアメリカでは、医療費を少しでも安く抑えるために、ジェネリック薬が選択されるケースが多いのです。

イギリスが82%でジェネリック使用率2位です。イギリスにはNHS (National Health Service)という政府運営の国民保険サービスがあります。NHSは税収で賄われているので、イギリスでは医療費は基本的に無料です。ただし、その分色々と制約があり、患者側は自由に病院を選べず(近隣の指定されたかかりつけ医しか利用出来ない)、薬も安価なジェネリックの使用が義務付けられています。ジェネリック薬の普及率が高くなっているのは、政府の強制力から来ています。

デンマークやノルウェーといった北欧の国は、高福祉高負担の社会で知られていますが、ジェネリック普及率50%前後となっており、OECDの平均と同程度です。

一方、OECDで最もジェネリック使用率が低い国はスイス(17%)です。現在、世界中で新薬を開発出来る技術力を有する国は、アメリカや日本など数カ国しかありません。その中でもスイスは、ロシュとノバルティスという世界のトップ5に入る製薬会社が二つも存在し、彼らメガファーマーのロビー活動が協力な事が、ジェネリックの普及が進まない大きな理由です。

ジェネリック問題に潜む、医師の利権と厚労省の天下り

スイスのような極端な例はあるにせよ、主要な国々と比較すると、日本の使用率28%はかなり低いです。日本では昔から、医師がジェネリックを積極的に使用しない傾向が強いのです。医師達の言い分は、例えばジェネリックの製造会社は小規模な会社が多く、安定した供給が出来ない事が懸念されるという点です。他にも、ジェネリック薬の成分は先発薬と完全に同じではない(添加物など一部異なる)ので、わずかな差が思わぬ副作用を生むリスクがあると、安全性を不安視する医師も少なくありません。

しかしジェネリックを使わない事には裏の理由があり、医師が先発薬メーカーと癒着があるからです。医薬品メーカーには「MR」と呼ばれる病院巡りの営業マンが居ますが、その実体は自社の薬を採用してもらうために医師を接待付けにしているだけだ、という口コミが支配的です。医者は薬価が高くとも懐は痛まないので、様々な難癖を付けてこれまで通り接待を受け、美味しい思いを続けたいという不純な医師も相当に多いのが現実です。

世界各国のジェネリック使用率比較まとめ
・国民皆保険制度がないアメリカではジェネリック使用率が高い
・イギリスでは医療費が無料だがジェネリックの使用が義務
・スイスはロシュやノバルティスの政治力で使用率が低い
・日本は医師の利権があるのでジェネリックに消極的

日本政府は、2020年にジェネリック薬の使用率を80%まで引き上げるという目標を立てています。冒頭で述べたように、厚労省ではOECDとは異なる計算方法を使っており、その方式では日本のジェネリック使用率は59%(2016年)まで高まっています。それでもあと4年で80%にするというのは、相当に高いハードルです。

そもそも医療費の一部に過ぎない薬価だけを、医療問題のやり玉に挙げるのは不公平です。医療機器も高騰していますし、税金と違って高所得者の支払い限度が低い健康保険料、無闇に病院に通い詰めて健康保険制度を喰い潰す老人、など他に優先すべき問題も多いです。厚労省が薬価だけを悪者に仕立てる理由は、そうやって圧力を掛ける事で、厚労省の官僚が製薬会社に天下りを増やしたいという意図があるのです。「薬価を問題にされたくなければ、俺達にも医者のように美味しい思いをさせろ!」という、官僚どもの横暴に過ぎないのです。

消費税増税が典型ですが、日本の官僚は特定の問題をでっち上げ、メディアを煽動して業界への圧力を掛け、緩和の見返りに天下りを要求するのがテンプレです。日本には、己の利権しか眼中にない官僚どもを叩き潰し、正しい改革を行える政治家が求められています。

 
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