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宅配便業界のシェアと収益構造

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近年、宅配便業界の過酷な労働環境が社会問題となっています。インターネット通販の普及、特にAmazonが日本でサービスを開始して以降、宅配会社の配達量は爆発的に増加しています。1990年頃の日本では、年間の宅配便取扱数は約10億個でした。それがAmazonがサービスを開始した2000年には約25億個、そして2016年には約40億個と、宅配便市場は拡大しています。

問題は、宅配のおよそ2割が受取人不在で再配達になるという事です。これは、一人暮らし世帯の増加や、共働きの夫婦が多くなった事の影響が大きいと考えられます。以下のグラフは、平均的な宅配便の荷物1個当たりの収益構造を表しています。

宅配便の収益構造

※データ出典;書籍「価格と儲けのカラクリ(高橋書店)」

ヤマトにせよ佐川にせよ、再配達の料金は無料なので、受取人不在の場合は宅配会社の負担は大きく増える事になります。宅配会社によっては、月間の残業時間が100時間を超える場合も少なくないです。こうした劣悪な労働条件が世間に知れ渡った事で、宅配会社で働きたがる若者は減少傾向にあり、慢性的な人手不足が続いているのです。

昭和の頃は、受取人不在時には隣人が宅配便を預かるケースはよくありました。そのため、再配達の割合は今よりずっと少なかったです。しかし近年は、近所付き合いが希薄な人が多いですし、個人情報・プライバシーの問題もあり、不在時には宅配業者が持ち帰るようになりました。こうした社会環境の変化も、宅配業者の負担が増えた理由の一つです。

宅配便業者のシェア

上記グラフは、2013年時の宅配会社のシェアを表したものです。ヤマト運輸、佐川急便の2社でシェアのおよそ8割を占めています。ヤマトと佐川は、Amazonと契約する(した)事でシェアを拡大しました。Amazonは、2005年頃から全品送料無料のサービスをスタートしていますが、これを専属で請け負ったのが佐川です。

送料無料という事は、当然その負担は宅配会社に掛かります。宅配業界では、荷物単価が250円以下になると確実に赤字になると言われますが、佐川はギリギリ250円を超える金額でアマゾンと契約したようです。結果として、佐川のシェアは格段に増えましたが、利益がほとんど出ない構造なので経営は苦しくなりました。

Amazonの契約単価は赤字すれすれ!?

2013年にはとうとう限界を迎え、佐川はAmazonから撤退、代わりに契約を結んだのがクロネコヤマトです。佐川は下請け業者を使っていたので利益が出にくい構造でしたが、ヤマトは基本的に全て自社ドライバーが配達を行うため、損益分岐点が低く、安い単価でもやっていけるという目論見があったのです。とはいえ、ヤマトも経営状態は芳しくなく、2017年春には27年ぶりに配送料の値上げを発表しました。また、再配達の受付時間の短縮も行われています。

宅配業者の負担を軽減する案は色々考えられています。例えば、コンビニ預かりで荷物を受け取れるサービスです。コンビニは24時間営業ですし、全国各地に店舗があるので、受取人の利便性が高いというメリットがあります。一方で、コンビニのバックヤードが荷物置き場になってしまい、店舗側が困るという懸念もあります。

他には、小型無人飛行機「ドローン」を使った自動配達システムの研究も進んでいます。米Amazonは数年前より、真剣にドローンによる配送実験を行っています。しかしドローンは積載量に限界がありますし、日本の法律では飛行可能空域が定められているなど問題点は山積みで、実現は正直言って不可能でしょう。

宅配便業界のシェアと収益構造まとめ
・宅配便はヤマトと佐川でシェアの8割近くを占める
・Amazonとの契約単価は赤字すれすれで、利益がほとんど出ない
・宅配料金の値上げ、特に再配達の有料化は避けられない

ちなみに、海外の宅配事情は日本と大きく異なっています。まず、アメリカでは基本的に再配達は有料です。そして不在の場合は、玄関前に荷物を置き去りにされるケースが通例です。荷物の取り扱いも雑で、箱はおろか中身まで破損している事もよくあるらしいです。またフィンランドには宅配業者がなく、荷物は郵便局やスーパーにまで自分で受け取りに行く必要があるそうです。日本のように配達時間の指定が可能だったり、当日の再配達などに対応している国は極めて珍しいのです。

日本の宅配サービスは、世界的に見ても優れていますが、そのしわ寄せは宅配業者が背負わされているのです。少なくとも再配達の費用は、利用者が負担すべきではないでしょうか。

 
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