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難関国家資格のコスパ(合格難易度と平均年収)比較

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国税庁の調査によると、2016年の日本のサラリーマンの平均年収は422万円です(⇒日本人の平均年収と中央値の長期推移)。1996年のサラリーマンの平均年収はおよそ500万円でしたので、この30年で20%近くも減少している事になります。

そんな不況な時代でも、難関国家資格に合格することで就ける職業(パイロットや医師など)は、年収が高いことで有名です。一生安泰の職業ならチャレンジしてみたい所でしょうが、実際にはその難易度に見合うほどの年収を得られるのでしょうか?そこで、難関とされる国家資格を、難易度(合格率や勉強時間)と平均年収を比較し、コスパが良いかどうかを考えてみました。数値は全て、2017年時点のものです。

平均勉強時間の数字は職業によって基準が違っています。例えば、パイロットの1500時間は会社で養成訓練を受ける時間であり、医師の4000〜5000時間は大学の医学部に入るために必要な勉強時間なので、単純比較は出来ません。詳細は本文にて。

難関国家資格のコスパ比較表
職業名 資格合格率 平均勉強時間 就業人数 平均年収
パイロット 非公開 1500時間以上 6000人 1531万円
医師 90%以上 4〜5000時間 31万人 1098
弁護士 23.9 1万時間 3万6000人 654
税理士 17.8 2〜2500時間 7万7000人 717
不動産鑑定士 13.0 15〜2000時間 5300人 667
社会保険労務士 5.8 1000時間 4万人 670
一級建築士 11.7 1000時間 37万人 644
獣医師 81.8 - 3万9000人 638
薬剤師 68.1 - 29万人 532
看護師 89.4 - 163万人 519
行政書士 11.4 700時間 4万7000人 600
国家公務員T種 約5% 15〜2000時間 - 1千万円?

飛行機のパイロット(コスパ=★★★)

今回挙げた中で最も収入が多い職業が飛行機のパイロットで、平均年収は1531万円とサラリーマンと比較して3倍以上という高収入です。

飛行機を操縦に必要な免許は、自家用操縦士、事業用操縦士、定期運送用操縦士、准定期運送用操縦士の4種類あります。ここでは一般的意味でのパイロット(JALやANAなどの航空会社に就職)である定期運送用操縦士について記述しています。

パイロットになる方法は大きく分けて二種類あります。一つは航空大学に入学してライセンスを取得し、その後航空会社に就職する方法。もう一つが航空会社に就職し、その会社でパイロット養成訓練を受けて資格を取得する方法です。

いずれの場合も資格取得は困難であり、特に航空会社のパイロット養成訓練は倍率が100倍以上という超難関です。合格率は非公開なので具体的な数字は不明なものの、相当な難易度であると推測されます。それでも年収の高さが圧倒的なこと、今後は世界的に航空需要が高まるので食いっぱぐれないこと、立場が極めて強く(ストが起こせる)年収が下がらないこと、などを加味すると、難易度に見合うコスパはあると言えるでしょう。

医者(コスパ=★☆☆〜★★★)

次いで平均年収が高いのが、1098万円の医師です。とはいえ、医師になるため(大学の医学部に入学する)には4000〜5000時間もの長期的な勉強時間が必要で、しかも大学ではそれと同等以上の勉強が必要だというのが定説です。そのうえ、医学部は私立大学だと2000〜4000万円もの学費が掛かるため、難易度が高いだけでなく、家庭の経済面でのハードルも極めて高いのです。国公立だと350万円程度で済みますが、難易度は私立よりも遙かに高くなります。

日本で医師として働いている人は合計で31万人もいますが、診療科によって医師の数は大きく違います。産婦人科や小児科は慢性的な医師不足が社会問題となっている一方、皮膚科や眼科など「命に関わるリスクが少ない診療科」は人数が過剰で、独立開業してもコスパが合わないという口コミが支配的です。

最も酷いのは歯医者で、今や全国の歯医者の数はコンビニよりも多いという、供給過多な状況です(歯科医院:約68000件 / コンビニ:55000件)。歯科医の平均年収は300万円程度しかないという統計もあり、最もコスパの悪い資格だという口コミも多いです。

※歯科医は「歯学部」として通常の医学部とは別。レベルは医学部より遙かに低いが、学費は高い。

なお、医師国家試験の合格率は90%以上と高くなっていますが、これは決して試験の難易度が低いというわけではありません。医師国家試験は医学部で6年間技術や知識を学び、卒業試験に合格した人だけが受けられる仕組みです。医学部の卒業試験は医師国家試験よりも難易度が高いとも言われるので、劣等生は受験資格すらないのです。獣医師や薬剤師の合格率が高いのも、概ね同じ理由です。

弁護士(コスパ★★☆)

弁護士は「高収入な職業の代名詞」と思われていましたが、現在では平均年収は654万円と、そこまで高額ではありません。弁護士資格を持っていても、立派な事務所を構える成功者も居れば、そこで下っ端として働く「イソ弁(居候弁護士)」、さらにはアディーレなど全国規模の大手法律事務所で勤務する「サラリーマン弁護士」など様々です。

当然、雇われの身では年収は低いので、サラリーマンと大差ない薄給で働く人も少なくないです。また仕事が多いのは人口の多い東京などの都市部であり、地方での弁護士のニーズは少ないです。仮に開業弁護士であっても、地方に居ては高い年収を得ることは難しいのです。

弁護士になるには司法試験に合格する必要があります。司法試験の難易度は、日本の国家試験の中でも最高難度であり、平均勉強時間は1万時間が必要とさえ言われています。

ちなみに、日本テレビの番組「行列のできる法律相談所」などに出演している北村晴夫弁護士は、司法試験合格までに8年も掛かったという事です。テレビで大活躍している有名な弁護士でさえ、合格に何年も掛かっていたりして、しかも雇われの身ではサラリーマンと大差ない年収なのです。よって弁護士資格のコスパはあまり良くないといえるでしょう。

税理士や行政書士(コスパ★☆☆)

弁護士や税理士や行政書士など「士」の付く資格、いわゆる先生呼ばわりされる職業は通称『サムライ業』と呼ばれます。難関資格だけど高収入というのが定説でしたが、近年では弁護士以外のサムライ業も年収が低下傾向です。またAI(人口知能)が発達すれば、これらの職業も一部のスペシャリストをのぞけば全滅していくという口コミが支配的です。

既に現在でも、行政書士などは供給過多かつ元々低年収なので、コスパは非常に悪い資格です。今後はこれが、税理士や不動産鑑定士などにも広がっていく可能性が高いです。

薬剤師(コスパ★★★)

サムライ業とは対照的に、薬剤師や看護師は2018年現在、人手不足の業種であり、引く手あまたの状態です。但しこれも、法改正など政治判断一つで、状況は一変する可能性もあります。

例えば薬剤師は現在「ドラッグストアでも時給3千円以上でバイトできる」などとコスパ最強の資格ですが、もし第一類医薬品の制限が解ければ、一気に時給は暴落します。現在は国家資格という特権でコスパの良い資格でも、将来ずっと安泰だとも言えないことには注意が必要です。

難関国家資格のコスパ(合格難易度と平均年収)比較まとめ
・パイロットの難易度は高いが、高年収で絶対食いっぱぐれない
・医師になるには学力だけでなく金銭面でのハードルも高い
・弁護士などのサムライ業は平均年収が下落傾向
・薬剤師は現在はコスパ最強だが、将来は安泰とも限らない

このように、現時点ではパイロットや薬剤師などはコスパの良い資格だと言えますが、永遠にそうであり続けるとも限りません。そう考えると、公務員試験は合格すれば一生安泰(リストラ無し)、休暇などの福利厚生も民間企業とは桁違いに良い・・・と圧倒的です。本当にコスパ最強の国家資格は、公務員試験で間違いないですね。

 
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