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コミケ来場者数の推移と著作権問題の解決方法

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コミケ(コミックマーケット)は、1975年にスタートした同人誌即売会です。近年は東京ビッグサイトにて、8月中旬(夏コミ)と12月末(冬コミ)の年二回開催されています。当初は数百人程度の小規模な展開だったのが、口コミで人気が高まって規模を拡大していき、現在のコミケは年間来場者数100万人以上というビッグイベントに成長しました。下記のグラフは、1996年以降のコミケの来場者数を表したものです。

コミケ来場者数の推移グラフ

90年代〜2000年代前半までは概ね右肩上がりを続けていましたが、近年は毎回50〜60万人程度(×年2回)で横ばいが続いています。来場者が頭打ちしている理由は、会場の東京ビッグサイトの収容人数が限界なためです。コミケは毎回3日間開催ですから、1日当たり17〜20万人程度の人が詰め掛ける事になります。ビッグサイトは日本最大の展示場とはいえ、1日20万人以上を収容するのは不可能です。ゆえに、開催日程を増やさない限りキャパは増やせないので、今後も来場者数は同程度で頭打ちです。

コミケに出展するには事前に申し込みが必要です。しかし、募集サークル数35000に対し、申し込み数は毎回50000程度あるので、参加出来るかは抽選で決定されます。当選確率はジャンルによって大きく異なりますが、概ね50〜70%と言われています。なお、人気の高いサークルは受かりやすいという口コミもありますが、信憑性は不明です。

コミケで販売される漫画にはオリジナル作品もありますが、大半は既存の漫画やアニメ、ゲームなどをオマージュした二次創作です。つまり、漫画やアニメの大ヒット作が生まれた年は、コミケも賑わう傾向があります。例えば、宇宙戦艦ヤマトや機動戦士ガンダムのブームは多くのSFおたくを生みましたし、キャプテン翼や聖闘士星矢などは、腐女子文化を拡大したと言われています。他にも、幽遊白書、セーラームーン、エヴァンゲリオンなど、コミケの市場拡大に貢献した作品は数多いです。

コミケの盛り上がりによって、同人サークルから商業メーカーに転換したケースもあり、TYPE-MOONの月姫はその代表格と言えるでしょう。また、近年では企業が積極的にコミケに出展したり、小林幸子や叶姉妹などの有名人も参加するなど、もはや同人誌即売会の域を超えた存在となっています。

コミケの著作権問題に解決方法もあるのだが・・・

コミケの改善点はキャパ不足だけでなく、最大の問題は著作権侵害です。前述の通り、コミケで販売される漫画の多くは二次創作であり、そのほとんどは漫画原作者やアニメ制作会社の許可を得る事なく、無断で作られたものです。コミケは著作権侵害の作品を大々的に販売しているにも関わらず、40年以上にわたって続いているという、不思議な文化圏となっています。

実際のところ、ネタ元となっている著作権者の多くは、コミケを黙認しています。著作権侵害は申告罪なので、権利を持った漫画家やアニメ会社が訴えなければ、罪に問われません。黙認されている理由としては、同人作家は原作の最大のファンでもあるので、それを取り締まる事はファンの減少に繋がる懸念があるためです。近年はTwitterやフェイスブックなどのSNSが発達したので、余計な事を言って炎上するのを恐れている漫画家も多いです。

そもそも、大多数の同人サークルの売り上げは小規模であり、作家や企業が手間を掛けて裁判を起こしても、得られる損害賠償額はわずかです。また、人気の高い作品は同人作家も数千人の規模になるため、それぞれの活動実態を調査するのは膨大な時間が必要になります。このように、著作権侵害を訴える事の費用対効果が薄い点も、黙認されている理由の一つです。

ただし、著作権侵害はあくまでも黙認されているだけであり、場合によっては訴えられるケースもあります。例えば、ドラえもんの最終回を無断で執筆した同人作家が、2007年に小学館から警告を受けたケースがあります。

この同人誌は、原作のドラえもんの絵柄や内容を上手く踏襲し、感動的なストーリー構成となっていた事で話題となり、同人誌としては異例の1万5千部以上を販売しました。しかし、売り上げがあまりに大きすぎる事や、原作の藤子不二雄の絵にあまりに似すぎていたために本物と勘違いする人が続出した事が問題になりました。小学館は著作権侵害を黙認出来ないと判断し、作家に対し同人誌の販売中止や売上金の一部の支払いを求めたのです。このように、あまりにも影響が大きすぎると、作家や企業も法的措置に出る場合もあるので注意すべきです。

このようなコミケの著作権問題を解決する方法として、有力な案もあります。オタキングこと岡田斗司夫氏が提案する「コミケ専用マネーを作り、その一部をプールして漫画家に事後報告で還元する」という、ジャスラックと同じ方式です。

但し岡田氏も言うように、この方法を実現するには、著作権に関する法改正が必要だという大きな問題もあります。法律を変えるには政治家を巻き込む必要があるので、プール金の一部をロビー活動費に回すという案が語られていますが、根回しには膨大な労力と時間が掛かります。岡田氏がこの方法公表して賛同の口コミが多かったにも関わらず、今だ実現には至っていません。

仮にコミケなどの版権をプールする団体が出来ても、政治家が絡めば天下り官僚も必ずセットで沸いて来るので、ジャスラックのような腐敗団体と化すリスクも高くなるため、一筋縄ではいかないと思われます。

コミケ来場者数の推移まとめ
・コミケは最初、数百人規模の小さな口コミイベントだった
・来場者は年々増加し、現在では年間100万人以上の規模に成長
・同人誌の大半が著作権侵害(事実上黙認されている)
・著作権問題の解決方法として、ジャスラック方式の案もあるが・・・

もう一つ緊急の課題として、2020年の東京オリンピック開催に伴う問題があります。コミケの会場である東京ビッグサイトは、オリンピック前後の2019年7月〜2020年9月頃まで使用不可となります。日本で数十万人の来場者に対応出来る施設は、東京ビッグサイトしかありません。

東京ビッグサイトに次ぐ広さを誇る、千葉県の幕張メッセも同じくオリンピックに利用されるため、代替会場にはなりません(そもそもコミケは過去に幕張メッセから使用拒否されている)。現時点での解決策は見えておらず、2019〜20年はコミケの開催が危ぶまれています。

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