HOME > 医療と健康 > 日本人の血圧の平均値【年齢・男女別】
日本高血圧学会が定めた「高血圧治療ガイドライン2014」の基準では、上(収縮期血圧)が140ミリ・下(拡張期血圧)が90ミリを上回ると高血圧と診断されます。以下の画像は、2016年の日本人の平均血圧を年齢別に表したグラフです。
40歳代の男性だと、上(収縮期)は125・下(拡張期)が81というのが、日本人の血圧の平均値です。そして血圧は、年齢が高いほど上昇する傾向があり、また女性より男性の方が高いです。この法則は古今東西問わず共通しており、生物としての自然なサイクルなのでしょう。
年をとるに連れて高血圧になる理由は、血管の老化に伴って弾力性が失われる事で、血流が悪くなるからです。また、女性の方が血圧が低いのは、女性ホルモンのエストロゲンによって血管の柔軟性が保たれるためです。貧血患者の大多数が女性である事は有名です。
しかし、更年期になるとエストロゲンの分泌量が減少するため、男女の血圧の差は少なくなる傾向にあります。ゆえに、若い頃は平均的な血圧だった女性でも、年をとって急に高血圧になるケースもあるので注意が必要です。
日本人は世界的に見て血圧が高い傾向があり、その原因は塩分摂取量であるという説が有力です。洋食は高カロリーですが塩分はあまり多くないので、欧米人の血圧は意外と高くありません。それに対し、和食はヘルシーで健康的と思われがちですが、洋食よりも塩分がかなり多いために高血圧に繋がるリスクが高いのです。
人間の身体は、血液の浸透圧を一定に保とうとする働きがあります。そのため、塩分を過剰に摂取すると、血液中の水分(=血液量)が増えて血管に大きな圧力が掛かりやすくなり、高血圧を引き起こす・・・というメカニズムです。高血圧は、脳卒中や心臓病など命に関わる病気を引き起こす可能性があるため、できる限り平常値を維持する事が重要です。
世界保健機関(WHO)の基準では、1日の食塩摂取量の適量は5グラムであり、厚生労働省では18歳以上の男性は1日8グラム・女性は7グラムが目標値となっています。しかし、2016年の日本人の1日の平均食塩摂取量は9.9グラム(男性10.8g、女性9.2g)となっており、基準値を大幅に超過しています。
しかし意外な事に、日本の高血圧患者は年々減少しています。例えば60代男性の高血圧患者の割合は、1980年では71.6%でしたが、2016年では66.6%にまで減っています。同じく、40代女性の高血圧患者は1980年に31.6%でしたが、2016年は12.5%にまで激減しています。
日本人の高血圧患者の推移
・60歳代男;1980年(71.6%) ⇒2016年(66.6%)
・40歳代女;1980年(31.6%) ⇒2016年(12.5%)
※全年齢・男女とも高血圧な人は減少している。
このように、日本人の高血圧患者は減少していますが、その理由は塩分摂取量も減少傾向にあるためです。前述のように、日本人の塩分摂取量は9.9グラムで、WHOや厚労省の推奨値を大きく超えていますが、実はこれでも減少傾向なのです。1960年の日本人の1日当たりの平均食塩摂取量は15.6グラム(!)、1980年でも13.0gもあったのです。
日本人の塩分摂取量の推移
・1960年;15.6g ⇒1980年;13.0g ⇒2016年;9.9g
※厚労省の基準値よりは多いが、年々減少してきている。
つまり、日本人の血圧低下と塩分摂取量の減少は、相関傾向にあると言えるのです。
食塩摂取量が減少している理由は、日本人の食生活の変化です。戦後の日本では、味噌汁、焼き魚、漬物、梅干など、塩分の多い献立が中心でした。しかし近年では、このような伝統的な日本食は減り、肉を中心とした塩分の少ない洋食の消費量が増えています。
また、健康意識の高まりの口コミを受けて、キッコーマンやマルコメなど大手調味料メーカーは、20〜50%減塩した醤油や味噌を販売するようになりました。コンビニ業界でも、ローソンは塩分やカロリーを控えた食品を取り揃える「ナチュラルローソン」を展開するなど、多くの食品メーカーがヘルシー&減塩志向のメニューを増やしてきています。
つまり日本人は、塩分を控えるようになった事で、連動して血圧の平均値も低下するようになったのです。まだまだ欧米人よりは塩分摂取量は多いですが、それでも昭和の頃に比べれば血圧は正常値に近づきつつあるのです(一方でメタボ患者は増えていますが・・・)。
なお、日本高血圧学会の基準値は頻繁に変更されており、専門家からは「降圧剤治療で儲けたいためのステマに過ぎない」「基準値変更は血圧利権の現れだ!」という批判的な口コミも絶えません。しかし高血圧と、脳卒中・心筋梗塞などの大病が相関関係にあることは事実なので、血圧は貧血にならない範囲で低く抑える事が理想なのは間違いないです。
日本人の血圧の平均値【年齢・男女別】まとめ
・血圧は高齢者の方が高く、また女性より男性が高い傾向
・日本人の塩分摂取量の減少と、血圧の低下は相関している
・日本高血圧学会の基準値は眉唾だが、高血圧が悪なのは事実
余談ですが、ブラジルのアマゾンに住む「ヤノマミ族」は、食塩をほとんど摂取しない部族です。塩分と血圧の調査団体である「INTERSALT」によると、ヤノマミ族の人々は高血圧の症状が全く見られず、高齢者でも血圧が上昇しない極めて珍しい特徴があるという事です。