HOME > 医療と健康 > 世界各国の平均寿命の推移比較
日本は世界トップの長寿大国です。2015年以降は香港に抜かれて2位に転落しているものの、それまで約20年間は平均寿命世界一でしたし、そもそも香港は国ではないので厳密には今でも世界一です。厚生労働省の発表によると、2016年の日本人の平均寿命は女性87.14歳・男性80.98歳で、いずれも過去最高を更新しています。
平均寿命が年々伸びているのは、日本だけでなく世界的な傾向です。以下は、世界銀行のデータを元に作られた世界平均と主要各国の平均寿命の推移を比較したグラフです。
日本の2015年の平均寿命(男女合わせて)は83.84歳で、主要国の中では最も長寿です。世界の平均寿命が71.66歳なので、日本人はおよそ12年も長生きしている事になります。
日本人の平均寿命が諸外国と比較して長い理由が、医療制度が充実している事です。日本には国民皆保険制度があり、全ての国民は国民健康保険や社会保険などの公的医療保険に加入する事が義務付けられています。公的医療保険があるおかげで、病院で治療を受ける場合の患者の自己負担額は3割(高齢者は2割)で済むため、収入の少ない家庭でも金銭的な心配は少ないです。
また、自己負担が多くなる場合は高額療養費制度などの支援制度も設けられています。そのうえ、会社員は年1回の定期健康診断が義務付けられているので、健康上の問題も初期に発覚・治療がしやすいという環境が整っているのです。
他に、日本人が長寿の理由として挙げられるのが、ヘルシーな食生活です。和食は栄養のバランスに優れており、米はもちろん魚介類や漬け物なども脂肪分が少ないため、健康に良いとされています。また豆腐や納豆などの大豆食品は、良質な食物性タンパク質が摂取出来るので、動脈硬化になりにくいとも言われています。
最近の日本は食の欧米化が進んでおり、米や野菜よりも肉が好まれるようになっていますが、適度に肉類を摂取する事は長寿命に繋がるとも言われています。つまり、近年の日本は昔ながらの和食の良さと、欧米の食文化が上手く合わさった事で、平均寿命が伸びたのだという説を唱える学者も居ます。
また、日本人にはお風呂に入るという文化もあります。海外の入浴はシャワーで汗を流すのが一般的であり、日本のように湯船(バスタブ)にお湯を張る事は少ないです。体を温めると免疫力が上がるので、お湯に浸かる日本式の入浴形態が長寿に繋がっているという説もあります。
一方、世界のほとんどの国も平均寿命が伸びています。特にアフリカ諸国は、国際援助による医療の発展により、21世紀に入ってから10年近く伸びています。またグラフではフランスを挙げましたが、イギリスなど他の西ヨーロッパ諸国も概ね80歳前後まで伸びています。
但しどの先進国も、日本ほどの長寿にはなっていません。例えばアメリカの2015年の平均寿命は78.74歳で、日本と比較して5年以上短いです。アメリカは日本と違って国民皆保険制度が無く、個人で民間保険に入るのが基本です。しかし保険料が法外にボッタクリなため、加入が出来ずに病院で治療を受けられない貧困層が大勢います。これらの医療難民を救うべく「オバマケア」なる公的制度も計画されましたが、貧困層以外からの反対や保険会社のロビー活動で骨抜きにされ、頓挫しました。
またアメリカは、食生活にも大きな問題があります。アメリカ人は肉類が中心なので脂肪分の取り過ぎな傾向がありますし、ドーナツや炭酸飲料など糖分の多い物を好む事もあって、肥満の人口が極めて多くなっています。過度な肥満は心臓に掛かる負担も大きく、様々な成人病の原因にもなるので、寿命にマイナス影響が出ていると推測されます。
それでも、ビル・ゲイツやウォーレン・バフェット、はたまたトランプ大統領のように、社会的に成功した大富豪ですら、ジャンクフードの愛好家を止めない著名人も多いことが、アメリカ人の食生活破綻を助長しているという口コミもあります。
そのアメリカよりも、更に平均寿命が短いのが中国(75.99歳)です。ご存知のように中国はまだ先進国入りはしておらず、発展しているのは上海や北京など大都会だけです。中国の田舎では、まともな医療を受けられない人の方が多数派です。そして、急激な経済成長に伴う大気汚染が深刻化しており、中国国民はPM2.5などの汚染物質に晒される生活を余儀なくされています。
このような環境が人体に悪影響を及ぼしている事も、日本やアメリカよりも平均寿命が短くなっている原因とも推測されます。中国のネットでは「政府は人口を増やしたくないから、あえて環境対策を行わないのだ」という自虐的口コミすら聞かれるほどです。
そして海外の中でも、特に異質な推移になっているのがロシアです。ほとんどの国の平均寿命は右肩上がりなのに対し、ロシアはこの50年で平均寿命がほとんど伸びていません。それどころか、1990年頃〜2000年頃までは減少傾向にありました。2015年の平均寿命は70.91歳で、世界平均の71.66歳を下回っています。
ロシアの平均寿命が短い理由は、極寒の気候とお酒の「ウォッカ」だという説が有力です。日本でも青森・秋田・岩手など極寒地域の県は平均寿命が短いという統計がありますが、より寒いロシアではその傾向がさらに強まるのでしょう。
そして、寒さを和らげるためにウォッカを大量に飲むロシア人が多いのですが、ロシアがん研究センターの調査によると、ウォッカをより多く飲む人ほど死亡リスクが高くなるという結果が出たそうです。ウォッカが誘発する死亡原因は、咽頭がん、肝臓疾患、飲酒による事故などです。
もう一つの特徴として、男女の寿命の差が大きいことも挙げられます。ロシア男性の平均寿命は65.4歳しかなく、女性の76.6歳と比べて11年も短いです。1991年にソ連が崩壊し、景気後退で失業してアルコール依存症に陥るロシア人男性が増え、暴力や犯罪なども増加したのです。
世界各国の平均寿命の推移まとめ
・日本人の平均寿命は世界でもトップ
・アメリカは国民皆保険制度が無いので貧困層が医療難民化する
・ロシアは極寒な気候とウォッカ?が原因で平均寿命が短い
ちなみに、世界中のほぼ全ての国において、男性よりも女性の方が長生きする傾向があります。世界保健統計の2015年のデータでは、WHOに加盟している194ヶ国で男性の方が寿命が長いのは、トンガ(男:74歳 / 女:70歳)だけという事です。女性の方が長生きする理由としては、男女のホルモンの違い、エネルギー消費量の違い、基礎代謝の違い、生活習慣の違い、かかりやすい病気の違いなど、色々な説があります。