HOME > 医療と健康 > 世界各国の救急車を呼ぶ料金
日本では救急車を呼ぶ料金は無料であり、これは世界的に見ても極めて異例の制度です。救急車が1回発進するのにかかるコストは約4万5千円と概算されており、これが無料で利用できるのは極めて優れた医療サービスだと言えます。
海外では日本と違って、救急車を要請要請することが有料の国が多いです。以下の画像は、世界各国の救急車を呼ぶ時の料金を一覧にしたものです。
※数値出典:ベレ出版・日本で1日に起きていることを調べてみた
アメリカでは州によって救急車の料金が違いますが、例えばロサンゼルスは45900円、ニューヨークは2万7千円が掛かります。また、官営と民営の二種類があり、民営の救急車は治療を受ける病院を選択できる場合があります。アメリカは日本と異なり、病院(医師)や保険会社によって治療費が違い、貧困層の人々には厳しい医療制度だという口コミが支配的です。
世界の中でも特に救急車の料金が高いのがオーストラリアで、最低距離(50km以内)でも約9万7千円が必要で、更に50km以降は1kmあたり1360円も掛かります。オーストラリアは国土が広大で人口密度が低いので、都市部以外の地域に住んでいる場合は、病院まで50km以上掛かる事もあるので、気軽に呼べる存在ではありません。
中国では地域によって救急車の料金は違いますが、北京の場合は3kmまで830円、それ以降は1kmあたり115円が掛かります。このように中国の救急車は比較的安価ですが、しかし無料という訳ではありませんし、救急制度が存在しない農村部も多いです。
イギリスやスウェーデンは、日本と同様に無料で救急車を呼ぶ事ができます。しかし、緊急性が低いにも関わらず要請を行ったり、イタズラ目的で利用した場合などは、罰金が科せられる事もあるので、ある程度の抑止力は存在しています。
シンガポールでは、事故時に救急車を呼ぶ場合は無料ですが、病気の場合は13600円が必要です。基本的に重篤の場合でなければ、料金は無料にならないという事です。
このように、海外でも救急車の要請にお金が掛からない国は存在しますが、それには色々と条件があるため、日本のように完全無料の国は無いそうです。
こうした海外と比較すると、無料で救急車を呼べる日本の制度は極めて珍しい事が分かります。日本の医療制度は崩壊しているという口コミは多いですが、後述する救急車の迅速性など、実際には世界的に見ても相当に優れた制度を維持しています。
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しかし日本でも、近年は緊急時でもないのに救急車の要請を行う人が増え、大きな社会問題になっています。「膝をすりむいた」「蚊に刺されて痒い」「一人暮らしで寂しいから」など、無茶苦茶な理由で救急車を呼ぶ患者が後を絶たず、救急隊員の労働環境の劣悪化が深刻になっています。日本の医療制度では、救急車の要請があると基本的には断われないため、緊急性の無い要請であっても無駄な出動を強いられるのです。
日本は世界的に相当優れた医療制度が整っています。救命救急はその典型で、総務省の2017年発表のデータによると、救急通報を受けてから現場に到着するまでの所要時間は全国平均で8.5分、病院収容所要時間は39.3分と、極めて短時間での対応が行われています。一方で、これだけの対応を無料で行う事が、医療費の増大に繋がっている原因でもあります。
世界各国の救急車を呼ぶ料金まとめ
・日本は救急車の料金は無料だが、無闇に呼ぶ問題を抱える
・世界では救急車は有料が当然。アメリカでは数万円の料金が掛かる
・中国は安いが、そもそも医療網が存在しない地域も多い
そのため「日本でも救急車を有料にすべきだ」と言う専門家も増えています。仮に有料化すれば、救急車を本当に必要な人だけが使うようになり、医療費が削減できて救急隊員の疲労も軽減できます。一方で、有料化によって本当に必要な人でも、救急車を呼ぶのを躊躇するケースが増える事も予想されます。現在の日本の救急車は、無料を続ける事は難しいが、安易に有料化する事もできないという、トレードオフ(二律背反)な問題に直面しているのです。