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残業が健康リスクを高めるという統計データ

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日本ではブラック企業に限らず、残業は「当たり前の事だ」という口コミが支配的です。「他の社員が残業しているのに自分だけ退社するのは気が引ける」「上司より早く帰るのはあり得ない」といった会社の雰囲気が、残業が慢性化する大きな原因です。

しかし近年では、残業が健康リスクを高めるという統計データも現れています。労働時間が増えるほど、脳卒中や心臓疾患の発症率も上がるという調査結果です。

イギリスで計52万人を追跡調査した研究(※注)によると、労働時間に比例して脳卒中の発症率が上がるというデータが示されています。週の労働時間が55時間以上の人の脳卒中を発症するリスクは、労働時間が36〜40時間の人の約1.3倍になるという事です。労働が長時間になると睡眠時間が削られ、疲労回復を十分にできなくなる事が、健康リスクが高まる理由です。他に、ストレスによる飲酒や喫煙の量の増加や、運動不足になりやすいといった点も、身体に悪影響を及ぼす原因だと指摘しています。

また労働時間が長いと、脳卒中以外にも心臓疾患などを引き起こすリスクも高まるという研究結果もあります。アメリカやヨーロッパなどの男女計60万人を平均8.5年間追跡調査した研究データでは、年齢や性別や社会経済的地位などのリスク要因を考慮しても、冠動脈性心疾患を発症するリスクも13%増加したという事です。

※注;イギリスのユニバーシティー・カレッジ・ロンドンのミカ・キビマキ教授らの研究チームが、計52万8908人の男女を平均7.2年間追跡調査した17件の研究論文の分析を基にしたもの。

また日本の厚生労働省でも、時間外労働が月100時間を超える、もしくは2〜6カ月の平均が月80時間を超えた場合、健康リスクが高くなると警告しています。

日本の残業文化は簡単には改善できない・・・

長時間の残業は、社員の健康だけでなく家庭関係を壊すリスクも高まります。夫が家庭を顧みず毎日夜遅くに寝るだけに自宅に帰るような生活では、妻や子供の心は離れ、家庭が崩壊するリスクが高まるのは当然です。

日本の千人当たりの離婚率は、1963年には0.73でしたが、2015年には1.81まで増加しています。こうした離婚率の上昇は、できちゃった結婚や熟年離婚の増加が理由だという口コミが多いですが、長時間の残業による家庭崩壊の影響もあると推測されています。

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高度経済成長期以降の日本では、社員は長時間の残業をして会社のために働く事が美徳と考えられてきました。当時の日本は事実上の終身雇用制度があり、会社への奉仕と引き換えにその立場を守るという意味もあったのです。また、こうした長時間労働の風習が、日本の経済発展に貢献していた側面もありました。

それからおよそ50年経った現在でも、日本では残業の慢性化が続いています。労働基準法の「36協定」では、残業は1週間で15時間以内、1か月で45時間以内、1年で360時間以内と定められています。しかしブラック企業だけに限らず、この法律を厳守している会社というのは極めて少ないのが、日本の実情です。近年では、残業は社員にも企業にも様々な面で悪影響を及ぼす事が認知され始めていますが、依然として残業が減ったという統計は見かけません。

残業が当然だという風土は、もはや日本の社会通念といっても過言では無く、口先だけの改革では変えることは難しいでしょう。過剰労働を本気で規制するには、残業が多すぎるブラック企業に業務停止などの厳罰を加えられるよう、政府は法改正するべきです。

残業が健康リスクを高めるという統計データ、まとめ
・残業は睡眠時間の減少で健康が損われ、労働生産性も下がる
・労働時間が長いほど、脳卒中や心臓疾患のリスクが高まる!
・日本の職場には残業が当たり前という空気がある事が問題

ちなみに「過労死」という言葉は、海外ではそのまま「KAROSHI」と言われるようになっています。「津波(THUNAMI)」「寿司(SUSHI)」「芸者(GEISHA)」などの日本語が海外でも通用するように、KAROSHIは悪い意味で世界に広まる言葉になっているのです。

 
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