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日本の長期金利(10年物国債の利回り)は、2016年1月に日銀がマイナス金利政策を導入した事で、一時はマイナス圏に入るなど未曾有の状態に陥りました。 長期金利のマイナス圏は、2015年1月にスイスが突入して以来、人類史上2番目の珍事でした。しかし日本の長期金利は長年低位で推移していたので、マーケットへのインパクトはそこまで大きくはなりませんでした。
勿論ですが、日本もかつては欧米のように、まともな金利が付いていた時代はありました。では日本の長期金利は過去にどの位の水準だったのでしょうか?1980年代半ばからの日本の長期金利推移グラフを作ってみました。
source: tradingeconomics.com
上記グラフのように、21世紀に入ってからは日本の長期金利は一貫して2%を下回る水準でした。1990年代から、バブル崩壊による景気対策で政策金利は下げ続けられ、長銀や山一證券の経営破綻などを経て、1999年には史上初のゼロ金利政策に突入します。
しかし90年代前半までは4%以上、時には7%ほどもあるなど歴史上「まともな水準」でした。長期金利は、中央銀行の政策金利(公定歩合)と概ね連動して動きます。1980年代はオイルショックの後遺症から、インフレ抑制のために高金利政策が取られていたのです。
ところが1985年に突然「プラザ合意」という、為替のドル安誘導政策がアメリカのごり押しによって行われます。1ドル=250円程度だったのが、プラザ合意により1年で1ドル=160円程度まで急激な円高が進み、景気が悪化しました。対策として政策金利が引き下げられたのですが(だから長期金利も一時的に下がった)、この行為が昭和末期のバブル景気の引き金となりました。
円高が続いたので、マネーは為替差損のリスクが高い海外よりも、日本国内への投資に集中し、株や不動産の価格が押し上げられたのです。日銀はバブルが起きている事を認識しつつも、景気の腰折れを恐れて金融引き締め(政策金利の引き上げ)を先延ばしにした事が、事態をより深刻なものに発展させました。昨今の日銀関係者周辺に、低金利政策を続ける事に頑固に反対を唱える輩が多いのは、この80年代のトラウマがある事が理由の一つです。
※ちなみに低金利反対論者の他の派閥としては、債券市場に利害関係がある、あるいは財務省=増税利権の御用学者(ポチ)、などが代表格です。
2017年現在、東京では明らかな不動産バブルが起きており、マイナス金利政策を続ける事の危険性が指摘されています。一方で、日銀のインフレ目標2%は達成未達ですし、国内景気もまだ利上げできるほど上向いてはいません。不動産融資にだけ規制を掛けるのは、1990年の総量規制(バブル崩壊の引き金となった)という失敗例があり、導入は難しいでしょう。不動産バブル崩壊をソフトランディングさせるのは、かなり難しい状況です。
アメリカや欧州先進国では、住宅等の建設には一定の規制があり、供給過剰にならないようコントロールされていますが、日本にはそのような仕組みがありません。昨今の空き家率の上昇も、その事が理由です。日本では不動産市場に「ブレーキ」が無い分、バブルが増長しやすいのです。明らかな制度不備なのです。
日本の長期金利の推移まとめ
・日本も1990年代までは4%以上のまともな金利があった
・2016年からの日銀のマイナス金利政策で、長期金利もマイナスになった
・低金利政策が原因で、再び不動産バブルが生まれている
長期金利が上昇すれば、あらゆる市中金利も上昇するので、借り入れが巨額な不動産業界は真っ先に危機に瀕します。残念ながら、日本の不動産市場は確実に破綻が近づいているのです。