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世界の物価を比較するうえで、1980年以降の各国の消費者物価指数の推移グラフを作りました。消費者物価指数とは、基準年からどれだけ物価が上昇したのかをパーセンテージで示した数値で、日本では総務省が毎月発表しています。消費者物価指数の変動は、様々な経済施策(年金額の改定など)に影響を及ぼす重要な指標です。
世界の主要国は基本的にインフレ傾向ですが、日本だけが長期的に物価が横ばい〜やや下落基調の「デフレ」が続いています。1980年を基準に2016年までの36年間を比較すると、ドイツが205、アメリカは約291と物価は着実に上昇しています。また韓国が457、中国は574と、新興国ほど高いインフレ率で推移しています。一方で日本は、80年代こそインフレは起きていましたが、バブル崩壊後の1990年代中期から2010年頃まで、物価が上昇せずに推移してきました。
※データ出所;IMF(World Economic Outlook Databases)
上記36年間の年平均インフレ率 | ||||
日本 | アメリカ | ドイツ | 中国 | 韓国 |
0.8% | 3.0% | 2.0% | 4.9% | 4.3% |
経済が活発になると、多くの人が物を購入するようになります。企業は多少値段を高くしても、需要がある限りは物が売れます。こうして物価が少しずつ上昇する状況がインフレです。極端にインフレが進むと、ジンバブエのように国民生活が破綻するリスクもあります。しかし中国くらいのインフレ率なら全く問題ないですし、経済を好循環させるには、最低でも2%程度の緩やかなインフレが絶対に不可欠です。
逆に、物価が下がる状況がデフレです。「デフレなら物が安く買えて良いのでは?」と考える人もいるでしょうが、デフレ下では経済成長が不可能なので良くない状況です。
例えば、今1万円で販売されているテレビが、デフレの影響で来年に9500円で買えると予想されるなら、買い控えようとする人が増えるでしょう。こうなると、企業は物を売るために無理な値下げを余儀なくされますが、そのしわ寄せは労働者の賃金に反映します。給料が減ると人々は増々買い控えするので、更に物が売れなくなり〜という悪循環が延々と続くのです。ですから、デフレ下で健全な経済成長が起きる事はあり得ないのです。
実は世界の多くの国では、緩やかなインフレが起きていくよう、政府や中央銀行がコントロールしようと「インフレターゲット」と呼ばれる政策を導入しています。上記のように、物価が上昇基調でないと景気は良くなりませんし、政府の借金(国債)を将来的に目減りさせる効果もあるからです。アメリカも2012年まで、インフレターゲットは表向きでは未導入でしたが、実際には計画的に物価上昇をコントロールしていた事は公然の事実です。アメリカが長年「双子の赤字」であっても経済が破綻しないのは、国の借金をインフレで目減りさせてきたからです。
世界の物価推移比較まとめ
・アメリカなど世界各国はインフレだが、日本だけデフレが続いていた
・緩やかな物価上昇がなければ絶対に経済成長しない
・日銀が2%のインフレ目標を達成するために、更なる金融緩和が不可欠
日本は長年不況が続いていますが、その大きな理由が、20年以上もインフレが起きていなかった事です。理由は様々ですが、2013年に安倍政権&黒田日銀総裁になり、日銀が(世界に遅ればせながら)2%のインフレターゲットを導入し、デフレ脱却に本腰を入れ始めました。
しかし実際には、インフレターゲット導入後も1%程度の物価上昇に止まっており、景気もまだ本格上昇できていない状況です。ゆえに、今後は更に大幅な量的金融緩和に踏み込むなどして、インフレ目標を早期に達成させる努力が必要ですね。