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戦後、日本の物価は大きく上がりましたが、中にはあまり変わっていない商品もあります。「鶏卵」や「モヤシ」などは長年価格がほとんど変わっておらず「物価の優等生」と呼ばれています。そしてバナナもまた、物価の優等生です。以下は、バナナ小売価格の長期推移表です。
バナナの小売価格の長期推移 | |||
年 | 価格 | インフレ考慮 | 備考 |
1965年 | 264円 | 1100円 | バナナの輸入自由化(1963年) |
1970 | 193 | 610 | (オイルショックで物価高騰) |
1975 | 179 | 330 | |
1980 | 220 | 295 | |
1985 | 286 | 330 | |
1990 | 247 | 270 | (バブル景気で物価上昇) |
1995 | 205 | 210 | (バブル崩壊〜以下デフレが続く) |
2000 | 232 | 232 | |
2006 | 218 | 225 | |
2018 | 250 | 250 | バナナダイエットブーム⇒終焉? |
ソース:物価の文化史事典(展望社)
日本では戦後暫く、様々な商品の輸入に制限が掛けられていました。バナナの場合、1963年に輸入の自由化が認められ、大衆に普及していきました。
1960年代前半まで、バナナはメロンなどと同様、病気のお見舞いなど特別な時しか食べられない「高級品」でした。1965年時点のバナナの平均小売価格は264円で、これは現在の物価に換算すると、約1100円に相当する高級品でした。しかしその後、1963年の輸入自由化で供給量が増えたことでバナナの値段は下がり続け、1975年には179円まで安くなりました。その後は概ね200円台で推移しているので、この40年間ほとんど価格は変わっていない事になります。
このバナナの事例から、かつて高級だった商品が、時を経て安く気軽に買えるようになる事を「バナナ化現象」と呼んだりします。バナナは栄養価が高く、エネルギー補給に適している事から、スポーツ選手に人気が高いです。またダイエット効果も期待できる?と話題になる事もあり、数年毎にブームが起きて、スーパーで品薄になる事もあります。
バナナの特殊な販売方法として有名なのが、明治後期頃に九州の門司港で始まった露天販売、通称「バナナのたたき売り」です。独特の口上「バナちゃん節」の軽快な語りが人気となり、同様の販売形態が全国に広まった事で、日本のバナナ消費量は大きく増えました。
日本バナナ輸入組合が2016年に行ったアンケート調査によると、よく食べる果物の1位はバナナ(64%)で、2位はりんご(51%)、3位はみかん(33%)と公表されています。この手のアンケートは主宰者のステマが入っている可能性もありますが、現在の日本でもバナナは人気で、食卓に欠かせない果物の一つである事は確かです。
しかし、日本国内のバナナの栽培は沖縄・鹿児島・宮崎などの一部地域に限られており、生産量はごくわずかしかありません。そのため、日本で消費されるバナナは99.9%以上が輸入品で、その内90%以上をフィリピン産が占めています。
バナナの栽培は、熱帯もしくは亜熱帯地域で、雨が多く、年間の平均気温が25度以上の土地が適しています。こうした条件に合うのは、フィリピン・インド・ブラジルなど赤道に近い国が多く、これらの地域は「バナナ・ベルト」とも呼ばれています。
バナナは青いうちに収穫・輸入され、国内で室(ムロ)と呼ばれる加工施設に入れて熟成させ、黄色くなった物を販売するという形式がとられています。ですが昔は食品の冷却技術が不十分で、船の移動速度も遅かった事から、輸送中に熟成が進みすぎる「籠熟(かごうれ)バナナ」が多く生まれました。こうした品質に問題のあるバナナを、少しでも早く販売できるように考えられた対策が、前述の「バナナのたたき売り」です。門司は海外からのバナナが輸入される港だった事から、この場所でたたき売りが始まったのです。
しかし近年では、熟れすぎたバナナでもお菓子やジュースなどの加工品に使えるようになった事、またバナナ自体の価格が安くなった事もあって、たたき売りは一部のイベント以外では見掛けなくなりました。
なお、熟した黄色い状態でのバナナの輸入は、植物防疫法で禁止されています。その理由は、熟したバナナにはミバエなどの熱帯性特有の害虫が寄生しているリスクが高いためです。一方で、熟成していない青いバナナには、こうした害虫は寄生しないという事です。
バナナの小売価格の長期推移まとめ
・終戦直後は高級品だったが、1960年代後半から大衆化が進む
・バナナの小売価格は1980年代から200円台で変化が無い
・日本で消費されるバナナは99.9%以上が輸入品
ちなみに、バナナは日本で人気の高い果物ですが、世界的に見ると日本の消費量は少ない部類です。日本の1人当たりのバナナ消費量は年間7〜8kgですが、ヨーロッパや北米は15〜16kg、主食としているニューギニアや東アフリカ地域では200kgを超えているとの事です。