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戦後の牛肉の値段(小売価格)の推移

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日本で牛肉が頻繁に食べられるようになったのは、明治時代以降です。当時は牛鍋(現在のすき焼き)が大流行し、庶民が牛肉を口にする機会が増えました。戦後の高度経済成長期になると、日本は食の欧米化が進み、牛肉の消費量は大幅に増加しました。日本人が世界一の平均寿命になったのは、肉食による栄養状態の改善も一つの理由だとされています。

以下は、戦後の日本における牛肉の100グラム当たりの値段(小売価格)の推移です。

戦後の牛肉100gの値段の推移
平均価格 物価調整すると 備考
1950 35円 291円 この頃は大半が国産牛肉
1955 44円 267円  
1960 61円 341円  
1965 95円 393円  
1970 147円 466円 冷蔵庫の普及率が90%超 消費量増加
1975 298円 551円  
1980 338円 453円  
1985 356円 417円  
1990 383円 419円 牛肉の輸入自由化(1991年)
1995 401円 410円  
2000 393円 396円 全国各地でブランド牛が増え始める

参考資料:物価の文化史事典(展望社)

1950年の牛肉100グラム当たりの値段は35円でしたが、物価上昇を考慮して現在の値段に直すと約291円です。1970年頃には、家庭の冷蔵庫の普及率が90%を超え、なまものの長期保存が可能になった事で、牛肉の消費量も増大したのです。

1975年頃までは値上がりが続いていますが、それ以降は緩やかに値下がりし、400円前後で推移しています。牛肉の「実質価格」が横ばい〜値下がり傾向である理由は、輸入牛肉の増加です。

1990年頃まで、日本で流通していた牛肉のほとんどは国産でした。それが1991年に牛肉の輸入自由化が始まった事で、外国産の安い肉が多く出回るようになりました。国産牛肉100グラムの小売価格は概ね600円〜700円ですが、外国産はおよそ300円〜400円で推移しています。

一方で、1991年の牛肉の輸入自由化によって、アメリカ産の安い肉の流通量が増え、日本の畜産農家は苦境に立たされます。また近年は高齢化の影響もあり、畜産農家の戸数は大幅に減少しています。農林水産省のデータによると、2000年時の肉用牛の農家は11.7万戸ありましたが、2018年では4.8万戸と、4割程度まで落ち込んでいます。

大規模化とブランド化で安い輸入牛肉に対抗

こうした状況に対応すべく、日本の畜産農家は松阪牛・近江牛・米沢牛などの高級ブランド牛を生み出しました。米国産やオージービーフなどの安価な外国産牛肉に値段で対抗せず、高品質・高単価路線で利益を確保する戦略です。また上記の通り、日本の農家の戸数は減少していますが、1戸当たりの平均飼養頭数は増加傾向にあり、2000年がおよそ24頭、2018年が52頭と、農家の大規模化が進んでいます。

ちなみに、日本に牛が伝来したのは、5世紀頃にユーラシア大陸からの移住者が持ち込んだのが起源とされています。当時の牛は農耕や運搬など家畜用だったため、肉として食べる人はほとんどいませんでした。さらに、675年に天武天皇が肉食禁止令を発布した事で、牛(豚や鳥なども)を食べる事はできなくなったのです。

肉食禁止令が出された理由は、仏教では動物の殺生が禁止されていた事、そして日本の稲作体制の強化が目的でした。その後も各天皇によって肉食禁止令が繰り返し発布された事で、日本人は長期的に肉を食べられなかったのです。禁止令が解かれたのは、およそ1200年後の1871年の事です。

ただし近年の調査では、禁止令の期間中でも庶民は隠れて肉を食べていたという事も明らかになっています。そして上記の通り、明治時代には牛肉が一般化し、戦後は食の欧米化に伴って、消費量も増えていったのです。

牛肉の値段(小売価格)の推移まとめ
・日本で牛肉が一般化したのは明治時代の牛鍋
・牛肉の値段は1975年以降はあまり変わっていない
・1991年に牛肉の輸入自由化で、安価な外国産の肉が増えた

ところで、牛肉は生産性が極めて悪い食物です。1kgの牛肉を生産するには、エサとして25kgの穀物と15000Lの水が必要と試算されており、そのうえ肉牛になるまでには2〜3年程度の時間が掛かります。豚や鶏の場合はエサが少なく済み、成長までの期間も短いので、牛と比較して生産効率は良いです。この事が、牛肉よりも豚や鶏肉の価格が安い、最大の理由です。

牛のエサにする穀物や水を、そのまま人間が食べた方がロスが少なく、エネルギー効率は格段に上がります。それでも世界中の人々は、圧倒的な美味しさに惹かれ牛肉を作り続けるのです。

2003年、アメリカでBSEに感染した牛が確認され、日本への輸入が禁止されました。牛丼チェーン大手の吉野家では「米国産の牛肉でなければ吉野家の味が出せない」として牛丼の販売を停止、豚丼などの代替メニューで対応しましたが、松屋など他店にシェアを大きく奪われる事態に陥りました。人間の「牛肉好き」は、やはり圧倒的なのです。

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