HOME > 日本の物価の推移 > 飛行機の料金(東京〜大阪間)の推移
ライト兄弟が、人類初の有人飛行を成功させたのは1903年です。しかし実は、ライト兄弟の12年前の1891年4月29日に「二宮忠八(にのみやちゅうはち)」という日本人が、プロペラ飛行実験を成功させていたのです。ただし忠八の飛行機のサイズはわずか数十センチで人も乗れず、模型レベルのものでした。とはいえ忠八は、人類初の動力飛行実験を成功させた人物として歴史に名を残しているのです。
それから100年以上が経ち、飛行機は世界中を短時間で繋ぐ「旅客手段」として目覚しい進化を遂げてきました。では航空運賃も値上がりしてきたのでしょうか?戦後の東京(羽田)〜大阪(伊丹)間の航空運賃の推移を調べてみました。
航空運賃(東京〜大阪)の推移 | |||
年 | 運賃 | 現在の物価では | 備考 |
1950年 | 6000円 | 50000円 | JALの設立(1951年) |
1955 | 6300円 | 38000円 | ANAの設立(1952年) |
1960 | 6300円 | 35000円 | |
1965 | 6800円 | 28000円 | |
1970 | 6800円 | 21500円 | |
1975 | 10400円 | 19000円 | |
1980 | 14100円 | 19000円 | |
1985 | 15600円 | 18000円 | JALが完全民営化される(1987年) |
1990 | 14600円 | 16000円 | 消費税導入・通行税廃止(1989年) |
1995 | 14600円 | 15000円 | 事前購入割引の導入 |
2000 | 18500円 | 18500円 | 往復割引制度の導入 |
2005 | 18800円 | 19000円 | |
2015 | 約14000円 | 約14000円 |
参考資料:物価の文化史事典(展望社)
1950年の東京〜大阪の航空運賃は6000円で、近年と比較すると半額以下の金額です。しかし、物価の変動を考慮すると、1950年の6000円は現在の50000円に相当するので、むしろ昔の方が高かったという事になります。航空運賃の推移をみると、その後も値上がりしていますが、実はそれ以上に物価が上昇しているため、実質的には1995年頃まで値下げが続いています。
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当稿執筆時(2018年)における、JALやANAでの羽田〜伊丹空港の実質料金は、およそ1万4千円程度です。これは東海道新幹線とほぼ同じ料金で、明らかに対抗した値段設定をしていますね。
東海道新幹線は1964年10月1日に、東京オリンピックに合わせて開業しました。新幹線の開業当時の料金(東京〜大阪間・ひかり)は、1等車が5030円、2等車が2480円でした。
上記表には記載していませんが、1964年の航空運賃は7000円でしたので、新幹線の方が3〜6割程度安かったのです。実は1965年に、航空運賃は200円値下げされたのですが、これは東海道新幹線に対抗するための料金改定だったと推測されます。
近年では、従来の航空会社よりも安価なLCC(格安航空会社)が人気になっています。日本では、1998年にスカイマークが運行を開始して以来、LCCの新規参入は増え続けています。東京〜大阪間のLCCでの料金は5000円程度と、JALやANAと比較して格段に安いです。ただし、羽田空港の発着枠等の問題で、成田や関空など少し交通の便が悪い空港であることがデメリットです。
世の中のほとんどの商品・サービスは、技術革新によって年々値段が下がっていくことが普通です。企業はそれに対抗するため「付加価値」を付けて高い値段を維持しようと試みますが、飛行機の場合は、機内サービスは無論、速度的にもこれ以上の進化は望めない(詳しくは後述)ので、航空会社は値下げ圧力に対抗するのが難しいというジレンマを抱えています。
飛行機の料金(東京〜大阪間)の推移まとめ
・1950年の航空運賃は6000円で、現在の物価で5万円相当
・航空運賃は上昇してきたが、物価を考慮するとむしろ値下がり
・LCCの登場で飛行機の料金には、更に下落圧力が掛かっている
最後に速度の進化が難しいという件について。現在、飛行機での東京〜ニューヨークの所要時間は約14時間ですが、この数字は40年間ほぼ変わっていないです。現在の飛行機の速度はマッハ1(時速1200km)未満ですが、これ以上のスピードを出すとソニックブームと呼ばれる衝撃波が発生し、地上の街などに騒音や風圧で大きな被害を与えるリスクがあるのです。
技術的にはマッハ2以上のスピードを出す事も可能ですが、安全面から速度が制限されるので、所要時間が短縮されないのです。高速旅客機といえば、コンコルドの挫折話が有名です。燃費などのコスパ面だけでなく、最大のウリである最高速度を(安全面から)海上だけでしか出せないという問題を抱えていたことも、コンコルドが事業に失敗した大きな理由でした。
ゆえに近年の旅客機開発は、燃費や積載量・安全性は重視されていますが、速度アップはほぼ考慮されないそうです。この現状から、航空運賃を高値維持し続けることは難しいでしょうね。