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戦後の米の値段の長期推移【日本の物価】

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日本人は長らく「米(コメ)」を主食としていましたが、近年は食の西洋化などに伴って米離れが進んでいます。今からおよそ50年前の1965年には、日本人が1年間に食べる米の量は100kgを超えていましたが、2015年には約50kgと半分にまで減少しているのです。

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総務省の家計調査によると、2011年の1世帯の年間支出額は、米が2万7428円なのに対し、パンは2万8318円と、調査以来初めて逆転したという事です。こうした日本人の米離れは、値段にも影響を与えています。以下は、戦後の米の値段(10kgあたり)の推移表です。

米(10kg)の値段の推移
値段 備考
1950年 445円  
1955 765円  
1960 870円 戦後初めてエンゲル係数が40%以下に
1965 1360円  
1970 1880円 減反政策の開始
1975 3330円 オイルショック(インフレ)で米価も上昇
1980 4190円  
1985 4797円  
1990 4932円 消費税3%の導入(1989年)
1995 5118円 消費税5%に引き上げ(1997年)
2000 4803円 米の輸入開始(1999年)
2005 4716円  
2010 4509円  
2015 4143円  
2017 4429円 糖質制限ダイエットブームによる逆風

※参考ソース:物価の文化史事典(展望社)
※1960年までは日本銀行のデータ、1965年・1970年は総務省統計調査、1975年〜2005年までは東京の小売価格(国産うるち米・中)、2010年以降は総務省のデータ、が出所となります。

1950年の米の値段は445円で、これは現在の物価に直すと3700円程度に相当します。それ以降も、物価の上昇よりも米価の上昇幅の方が大きい状態が、1995年頃まで続きました。しかし2000年頃をピークに、米価は下落に転じています。

米価が値下がりしている理由は、米離れ(食の欧米化)が加速している事、核家族の増加で米を炊かない世帯が増加した事、1999年の米の輸入自由化に伴って安価な外国産米が多く出回るようになった事、などが挙げられます。また最近では、女性を中心に糖質制限ダイエットが広まっており、日本人の米離れを更に助長しています。

農水省・農協が全てを決めている事が、コメ文化衰退の元凶

現在の日本では、米の値段は基本的に農協の主導で決定されるため、米農家は言い値で卸すしかない状況です。そのため、2000年以降に米の値段が下落し、作れば作るほど赤字という状態になっても、農家側は何の対応もできなかったのです。

しかし2015年頃から米の値段は若干値上がり傾向で、農林水産省の統計ではこの3年で平均価格は3割上昇しています。その理由は、米農家がこれまでの主食用米(人間用の米)から、飼料用米(牛や豚などの家畜用)の生産にシフトしているからです。農林水産省は「水田活用の直接支払交付金」という制度を実施しており、飼料用米への補助金を手厚くしているのです。

農地10アール当たりで比較すると、米農家が主食用米の販売で得られる収入(売上)はおよそ10万円ですが、飼料用米は1万円程度しかありません。ですが飼料用米の場合は、政府からおよそ12万円の補助金が支払われる制度が作られたのです。そのため経費を差し引いた純利益では、農地10アール当たりの主食用米は約3万3000円、飼料用米は約5万8000円と逆転するのです。

このように、現在のコメ行政(農水省や農協)は、主食用米の生産量を減少させて、米の供給量を減らして米価を高値維持するという政策です。補助金によって米農家の生活は保護されていますが、この事が農家自身の向上心を削ぎ、日本人の米離れに対応できず、いつまでも農協の言いなりという泥沼から抜け出せない元凶でもあるのです。

戦後の米の値段の長期推移まとめ
・戦後の日本では、食の欧米化と共に米離れが進んできた
・近年は飼料用米を作る農家が増え、主食用米は値上がりしている
・米農家は結局、農水省&農協に生殺与奪権を握られている

近年は、農家の数も激減してきています(⇒日本の農家の戸数と作付面積の長期推移)。テレビや新聞でも「日本の農業の危機」などと叫ばれますが、農水省や農協に逆らえない(販路拡大や農地の買収などに制限が多い)現状では、企業や若者が農業に参入しないのは当然です。特に農協の利権を壊さない限り、日本の農業は縮小衰退し、米価の釣り上げも限界が来る事は避けようが無いのです。

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