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【競馬】世界の高額賞金レースランキング

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日本競馬の史上規模(馬券の売上高)は年間2兆円を超え、ダントツで世界最大です。賞金も全体的に恵まれており、中央競馬(JRA)では最も格の低い未勝利戦でも優勝賞金は500万円ほどあって、こんな国は前代未聞です。例えばブラジルやアルゼンチンなど南米に行けば、最も格の高い『G1レース』ですら、優勝賞金500万円未満のレースはざらにあります(※注1)。

※注1;ブラジルやアルゼンチンは、日本と同じ『国際セリ名簿パート1国』つまり競馬の世界では最高峰の国として、同格の位置付けです。

このように、底辺への賞金配分は圧倒的に世界一の日本ですが、海外には一部の大レースに限って言えば、日本よりも遙かに高額賞金のレースも存在しています。以下は、2017年の世界の高額賞金競馬レースのランキングです。

世界の高額賞金レースランキング(2017年)
レース名 国名 条件 総賞金 1着賞金(円換算)
ペガサスワールドカップ アメリカ ダ9F 1200万ドル 720万ドル(8億円)
ドバイワールドカップ UAE ダ2000m 1000万ドル 600万ドル(6.6億円)
ジ・エベレスト 豪州 芝1200m 1000万豪ドル 580万豪ドル(5億円)
ドバイシーマクラシック UAE 芝2400m 600万ドル 360万ドル(4億円)
ドバイターフ UAE 芝1800m 600万ドル 360万ドル(4億円)
BCクラシック アメリカ ダ10F 550万ドル 330万ドル(3.6億円)
凱旋門賞 フランス 芝2400m 500万ユーロ 285万ユーロ(3.4億円)
メルボルンカップ 豪州 芝3200m 600万豪ドル 360万豪ドル(3.1億円)
ジャパンカップ 日本 芝2400m 6億円 3億円
有馬記念 日本 芝2500m 6億円 3億円
BCターフ アメリカ 芝12F 368万ドル 220万ドル(2.4億円)
日本ダービー 日本 芝2400m 4億円 2億円
香港カップ 香港 芝2000m 2500万香ドル 1425万香ドル(2.1億円)
クイーンエリザベスS 豪州 芝2000m 400万豪ドル 234万豪ドル(2億円)
天皇賞(春・秋共に) 日本 芝3200m
芝2000m
3億円 1.5億円
宝塚記念 日本 芝2200m 3億円 1.5億円

※為替レートは1米ドル=110円、1ユーロ=120円、1豪ドル=85円、1香港ドル=15円程度で換算し、端数は四捨五入しています。

2017年に最も賞金が高かった競馬レースは、アメリカ・ガルフストリームパーク競馬場で行われるダート9ハロン(約1800m)のG1「ペガサスワールドカップ」で、賞金総額1200万ドル(約13億円)、優勝賞金は720万ドル(約8億円)という規模でした。同レースは、12頭ある出走枠の権利が各100万ドルで売られ、その販売額が賞金の原資となっています。出走枠を購入した馬主は、レースの着順に応じた賞金だけでなく、馬券売上や放映権料などの競馬開催における純利益を山分けできる権利もあるという、かなり特殊な形態のレースです。

昨年の第一回ペガサスワールドカップは、アロゲートとカリフォルニアクロームという、アメリカ競馬の2強が揃って出走した事で興行的にも大成功を納めました。これに気をよくしたのか(?)同レースを運営するストロナックグループは、2018年の総賞金を1600万ドルに増額すると発表しています。

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ランキング2位は、前年まで競馬の世界最高賞金レースとして君臨し続けていた、UAE(アラブ首長国連邦)のドバイワールドカップです。同レースは、4位にランクインしているドバイターフ・シーマクラシックなどと共に、毎年3月末にUAEのメイダン競馬場で行われる競馬の一大カーニバル開催のメインレースです。

UAEは将来の石油の枯渇に備えるため、首都=ドバイを観光都市化させる計画を遂行中です。F1レースやゴルフの国際大会などのスポーツイベントも開催しており、競馬のドバイワールドカップデーもその一環です。特に競馬は、ドバイの国王=シェイク・モハメドが個人的に趣味で入れ込んでいる事もあり(※注2)、最も力を入れたイベントとなっています。

※注1;シェイク・モハメドは皇太子時代より、その資金力を武器に多数の有力馬を購入し、世界中の大レースを勝ちまくる、究極の「大人の遊び」を堪能している、世界でも1.2を争う大馬主です。日本馬のアドマイヤムーンやユートピアなども、ドバイワールドカップデーで活躍した事で、彼の競馬組織=ゴドルフィンに高額で買収されました。

ドバイはイスラム教で賭博が禁じられているため、全てのレースとも馬券の発売はありません。よって賞金の原資は、シェイク・モハメドのポケットマネー(=ドバイの国家予算)として賄われています。2000年には「記念の大会となるから絶対に自分で勝ちたい!」と、所有する馬に「ドバイミレニアム」と名付け、見事ドバイワールドカップを優勝させるという離れ業を演じました。当時のネットでは『究極のジャイアンリサイタルやないか!』と尊敬とも呆れとも取れる口コミで溢れました。

シェイク・モハメドはこのような負けず嫌いな性格のため、ペガサスワールドカップに対抗して、ドバイワールドカップの賞金増額をしてくる可能性もあります。ドバイワールドカップデーには、日本からも毎年多数の馬が出走するので、賞金増額は喜ばしい事です。

ドバイ・凱旋門賞・ブリーダーズカップ・・・賞金の原資は様々

日本のJRAでは、競馬の賞金は全て馬券売上を原資として賄われていますが、世界の高額賞金競馬レースでは売上だけで賄うケースは希で、各々独自の方法で賞金をかさ上げしています。上記のように、ドバイワールドカップデーのレースは、元を辿れば「UAEの国家予算」です。

またランキング3位、オーストラリアのジ・エベレストは2017年に新設されたレースですが、賞金の大半はペガサスワールドカップとほぼ同じ方式で賄われています(60万豪ドルで12頭の出走枠が売られる)。ジ・エベレストが成功すれば、今後は世界中で「ペガサスワールドカップ方式」の高額賞金レースが増えるかも知れません。

フランスの「凱旋門賞」はカタール競馬馬事クラブ、オーストラリアの「メルボルンカップ」はUAEのエミレーツ航空がスポンサーとして、賞金負担をしています。世界の競馬では、このように大企業(特に中東勢)が冠スポンサーとして付き、賞金を出しているケースが大半です。

また6位と11位にはアメリカのBC(ブリーダーズカップ)開催の2レースがランクインしていますが、ブリーダーズカップは『種牡馬登録料(種付け料1回分)』と『産駒の当歳時登録料』として、広く薄く競馬界全体から賞金の原資をかき集める形式を取っていました※注3)。種牡馬登録料や当歳時登録料は拒否する事も出来ますが、そうするとブリーダーズカップの各レースに出走する際、馬主は巨額の追加登録料が課せられます。従って著名な種馬の大半が、BCの種牡馬登録料をしぶしぶ?支払っており、ヤクザのみかじめ料の如きビジネスとして成功しました。

※注3;創設当初の条件で、現在では若干変更(緩和)されています。

ちなみに競馬発祥の地=イギリスのレースは完全にランキング外です。最も賞金の高いダービーですら、1着賞金は90万ポンド強(約1.4億円)に過ぎません。イギリスでも、かつてはボーダフォン社がダービーの、デビアス社がキングジョージのスポンサーとして有名でしたが、現在は大スポンサーに撤退されて金欠気味です。イタリアやカナダなど、競馬産業が衰退してパート1国から転落の危機にある国も出ています。

日本競馬とて、中身は決して安泰ではありません。確かに馬券売上は世界一ですが、1997年のピーク時には4兆円以上あったので、近年は約半分まで落ち込んでいるのです。また最高賞金であるジャパンカップは、国際招待レースであるにも関わらず、海外から一線級の馬がほとんど来なくなって久しく、ファンからは「もう廃止すべきでは?」という口コミも根強いほどです。

ジャパンカップに海外から馬が来なくなった大きな理由は、日程の問題です。前後にブリーダーズカップ、香港国際競争、という複数のG1レースを1日で行うカーニバル開催に挟まれているおかげで、ジャパンカップがスルーされているのです。JRAは一日に複数の大レースを組む日程を極端に嫌っているので、米国や香港との誘致合戦に競り負けているのです。

このように、競馬に関してもグローバルな競争が年々激化しているのです。

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