HOME > 生活 > 日本人の米の消費量推移
江戸時代の日本では、米の収穫量で国力を表す「石高」(こくだか)という指標が用いられていました。世界の歴史を見ても、食物の収穫量で国力を示していた事例など類を見ません。日本人にとって、米という作物は特別であり、日本の歴史や文化を築いてきた重要な存在です。
しかし、現代人にとって米は特別な食物ではなくなり、消費量は年々減少の傾向にあります。以下は、農林水産省発表のデータを基にした、日本人一人当たり米の年間消費量の推移(5年毎)を表したグラフです。
最も古い統計の1965年には、米の消費量は一人あたり111.7kgと米俵二つ分近く(1俵=約60kg)ありました。しかし1970年には95.1kg、1975年には88.0kgと漸減していき、2013年は56.9kgと、過去50年で米の消費量は半分にまで落ち込んでいます。また、米の消費量減少に伴って、生産量も毎年平均で8万トンずつ少なくなっているとの事です。このように、日本では明確に「米離れ」が進んでいる訳です。
日本人の米離れの大きな理由が、食生活の欧米化です。昔の日本は、米と野菜や魚を中心にした献立が一般的でしたが、戦後のGHQのパン普及政策(※注)が引き金となり、高度経済成長期に海外から様々な食文化が伝わった事で、食文化の欧米化が進みました。献立の中心は肉になり、また米でなくパンを好む日本人が増加した事もあって、米の消費量は減少していったのです。
※注;戦後の食糧難の時期に、GHQは日本の学校給食でパンを普及させる政策を取りました。これは、日本にパン食文化を根付かせ、恒久的にアメリカの小麦の売りつけ先にしようと企んだ〜という裏事情があったのです。
総務省が発表した家計調査によると、2011年に日本の一般家庭のパンの年間消費額が米を上回ったとの事です(パン:2万8318円 / 米:2万7428円)。家計調査は1946年から始まりましたが、パンが米を抜いたのは初めてです。このデータからも、日本人の米離れが証明されています。
またご飯は「炊く手間が掛かる」事も米離れの理由だ、という口コミも増えています。近年では、一人暮らしだと家に炊飯器がない人も珍しくなく、また米の研ぎ方を知らない若者も多いようです。昔の日本は、家族3世帯で暮らす家庭が珍しくありませんでしたが、近年は核家族化・単身世帯の増加というライフスタイルの変化が進んでいます。
厚生労働省の2016年のデータによると、日本の1343万世帯が一人暮らしであり、全世帯に対する割合では約27%に相当します。一人暮らしや少人数の家庭では、ご飯を炊くのは面倒で、スーパーやコンビニで買って済ませる「中食」が増えている事も、米の消費量が減少した原因です。
実は、米離れが進んでいる裏の原因として、米農家の堕落も挙げられます。日本の米農家は、政府の減反政策(政府が米の生産量を決め、農家に割り当てる代わりに補助金を出す制度)によって保護されています。減反政策は、米農家は生産量が減っても問題ない(補助金が支給されれば良い)という姿勢になります。良い米を作って沢山売る〜という商売の基本精神がまるでない農家が多い事が、結果的に日本人の米離れを助長している側面も否定できないでしょう。
米の輸入を完全自由化したり、大規模法人の農業への参入を認めれば、もっとマシな政策になるでしょうが、米農家は田舎の議員にとっては票田なので、彼らを競争に晒す政策など取れるはずも無いわけです。日本の「米」産業は、八方塞がりの状況なので、米離れが進むのも当然だという口コミが支配的です。
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余談ですが、糖質制限ダイエットが流行の兆しを見せている事も、将来的に米の消費量をさらに減らす要因になるかも知れません。このダイエット法は、お米のような炭水化物を食べる量を減らし、肉(タンパク質)や野菜(食物繊維)をメインにすれば太りにくい〜という理論です。炭水化物が体脂肪を助長する事は、医学的にも定説になりつつあるので、炭水化物の代表であるご飯にとっては、猛烈な逆風だと言えます。
日本人の米の消費量推移まとめ
・米離れの原因は、日本人の食の欧米化(パン食)が大きい
・一人暮らしの世帯が増えた事で、ご飯を炊く家庭が減った
・減反政策による米農家の堕落も大きな問題
最近では、米粉を使ったパン(ゴパン)が開発されるなど、米食を増やそうという動きもありますが、炭水化物の摂取自体がダイエットで悪者扱いされるとお手上げです。そもそも高齢化や人口減少もあるので、日本国内の消費量増加は物理的に難しいです。米の輸出〜食の安全化を求める中国の富裕層などに米を売っていくなど、根本的な政策の転換も必要でしょう。