HOME > 農林水産業 > 日本の農家の戸数と作付面積の長期推移
日本は古来から農耕民族であり、特に米は食文化の中心として親しまれてきました。しかし近年では、食の欧米化に伴ってパンや肉などを好む人が増え、米の消費量は減少傾向にあります。カロリーベースで見た場合、米の消費量は1970年代はおよそ75%でしたが、2000年では60%にまで落ち込んでいます(⇒日本人の米の消費量推移)。
こうした日本人の米離れと相関するように、農家の数は減少しています。以下は、日本の農家の戸数と作付面積の推移を表にしたものです。
農家の戸数と作付面積の推移 | |||
年 | 農家戸数 | 作付面積 | 備考 |
1903年 | 515万戸 | 284万ha | |
1910 | 549万 | 292万 | (大正元年) |
1915 | 553万 | 303万 | |
1920 | 557万 | 310万 | |
1925 | 554万 | 312万 | (昭和元年) |
1930 | 559万 | 321万 | |
1935 | 561万 | 317万 | |
1940 | 547万 | 315万 | |
1945 | 不明 | 286万 | (第二次対戦終了) |
1950 | 617万 | 301万 | 農地改革(1947〜) |
1955 | 604万 | 322万 | 兼業農家が増え始める |
1960 | 605万 | 330万 | 高度経済成長。工業へ労働力がシフト |
1965 | 566万 | 325万 | |
1970 | 534万 | 292万 | 減反政策が始まる |
1975 | 495万 | 276万 | |
1980 | 466万 | 237万 | |
1985 | 350万 | 234万 | |
1990 | 317万 | 207万 | |
1995 | 285万 | 211万 | |
2000 | 233万 | 177万 | 米の輸入開始(1999年) |
2005 | 196万 | 170万 | |
2010 | 163万 | 162万 | |
2015 | 133万 | 150万 |
※参考資料:物価の文化史事典(展望社)
※なお2000年以降の農家戸数は、農林水産省のデータを参照しているので、厳密にはそれ以前と数字の連続性が異なっています。
1903年の日本全体における農家の戸数は515万戸、2015年では133万戸なので、100年間で4分の1にまで減少しています。作付面積も、1903年が284万ヘクタール、2015年が150万ヘクタールなので、ほぼ半減です。
日本で農家の戸数が減少している理由の一つが、戦後の高度経済成長による農業離れ=工業やサービス業への労働力シフトです。日本は古くから農耕民族だったので、戦前では国民の多くが農業に従事していました。しかし戦後は、経済発展により都会へ出て第二次産業(工業)や第三次産業(サービス業)に従事する人が増えていきました。理由は単純で、その方がお金になるから(農業は儲からない)でした。田舎では、農家の後を継ぐはずだった若者が次々に「オラ東京さ行くだ」とばかりに、都会へ流出したのです。
他に農家の戸数が減少している理由は高齢化です。2018年現在、日本の農業人口の60%超が65歳以上の高齢者であり、年齢的な問題で仕事を辞める人が増加しているのです。近年は核家族化が進んでおり、農家の後継者がいない事も、状況の悪化に拍車を掛けています。
そして前述のように、農家はあまり儲からないという事も、戸数が減少した大きな理由です。天候の悪化や台風などの災害によって収穫量が減少するリスクがあるうえ、農協(JA)が農産物の価格統制を行ってきたので、収入を増やす事が難しいのです。
そのため近年の日本では、専業農家は全体の3割程度しかなく、3分の2以上は他の生業も営む兼業農家となっています。しかもその兼業農家の7割以上は、農業以外の収入の方が多い「準主業農家」もしくは「副業的農家」となっているのです。
1970年には、政府主導による米の減反政策が開始されました。それまでの日本では、米の生産量を増やす事が目標にされていましたが、消費量が年々減少していた事や、1960年代後半の豊作によって米の収穫量が大幅に増加していた事から、米価維持のため意図的に生産量を減らす政策が打ち出されたのです。
★関連ページ;戦後の米の値段の長期推移
しかし減反した農家には補助金が支払われるので、収入はある程度補償されます。働かずとも金が入るという「ぬるま湯体質」と、JA(農協)が市場を寡占する事による競争の無さから、日本の農業は堕落していったのです。農水利権に染まっていない中立な専門家のほとんどは、日本の農業が没落した理由は「減反政策」と「農協」だと意見が一致しています。
近年では、アメリカのような作付面積の大規模化によって自給率を上げるべきだ・・・という口コミが増えていますが、複雑な農業利権によって大規模化の成功例は少ないのが実情です。
※岡山県での農業の大規模化の成功事例
上記のような、大規模化に成功した農家の事例は、全国でも極わずかです。仮に意欲ある若者が農業を始めようにも、まず土地の確保が難しく(※)、またトラクターの購入など初期投資も1000万円以上は必要で、新規参入が難しいという問題もあります。
※農地は(固定資産税が優遇される事などと引き替えに)売買や譲渡が厳しく制限されています。また農業関係で資金調達するには、農協以外の金融機関の融資はほぼ望めない(=農協の奴隷と化してしまい、自由な販路拡大などが出来ない)という問題もあります。
このような、農水省が意図的に作り上げた農業利権が、農家の新規参入や大規模化を妨げ、農業が衰退していく元凶となっているのです。
このように、日本の農家の戸数や作付面積が減少してきた理由は、何も日本が工業化してきた事だけでなく、農水省とJAの利権も大きな原因なのです。
農家の戸数と作付面積の長期推移まとめ
・日本の農家はこの100年間で半分ほどに減少した
・農家の高齢化や後継者の不在が理由
・農水省や農協(JA)の利権で、新規参入が難しいという問題も
2018年5月には、衆議院本会議でTPPの関連法案が可決しました。今後は海外からの輸入品の関税が撤廃され、安価な農作物が大量に入って来る可能性が高まりました。日本の農業はさらに厳しい状況になりますが、小泉進次郎あたりがJAの解体を断行しないかぎり、残念ながら農業の崩壊は止まらないでしょう。