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低視聴率な平成仮面ライダーがビジネスとして成功した理由

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日本の特撮ヒーロー番組の代表作である「仮面ライダー」。その中でも、2000年から始まった仮面ライダークウガ以降の作品は、昭和作品と区別する意味で平成仮面ライダーシリーズと呼ばれています。平成仮面ライダーは1年毎に新作が作られ、2017年現在までに18作品が放送されています。以下のグラフは、平成仮面ライダーシリーズの平均視聴率の一覧です。

平成仮面ライダーの平均視聴率一覧

多少の変動はありますが、全体的には視聴率が右肩下がりになっている事が分かります。ピーク時のアギトは11.7%を記録しましたが、ここ数年は一ケタ台の視聴率しかありません。近年は日本全体でテレビ離れが進んでいること、また少子化により主な視聴層である子供の数が減少している事が、視聴率低下の主な原因です。

※ちなみに初代仮面ライダーの平均視聴率は21.2%もあったそうです。

しかし低視聴率に反して、おもちゃの売上は近年の方が好調に推移しています。以下のグラフは、版権を持つバンダイナムコ社発表の、仮面ライダー玩具(食品やアパレルなどを除いた玩具のみの数字)の年度別売り上げをまとめたものです。

平成仮面ライダーのグッズ売上高の推移

2000年代は概ね100億円前後だった玩具売り上げが、2010年以降は200億円以上に急増しています。低視聴率にも関わらず、何故玩具売り上げがこれだけ伸びているのでしょうか?その理由は大きく分けて3つあります。

コレクションアイテムの展開で売り上げがアップ

一つめの理由が、変身ベルトに専用のコレクション系アイテムを連動させた事で、おもちゃの売り上げをアップさせた事です。仮面ライダーの玩具と言えば、フィギュアと変身ベルトですが、売上で巨大なのは後者です。変身ベルトは仮面ライダーのシンボリックアイテムであり、平成シリーズでも響鬼以外の主役ライダーは全てベルトで変身します。

初期の平成仮面ライダーでは、それ自体に音声や発光ギミックが備わっており、ベルトを一つ買うだけで「ライダーごっこ」遊びが出来ました。しかし、2009年放送の仮面ライダーWからは、ベルトの他に別途、専用のアイテムも必要になっています。

例えば、2010〜11年かけて放送された仮面ライダーオーズは、オーメダルと呼ばれるメダルを3枚組み合わせて変身します。オーメダルは、タカ・トラ・カマキリ・チーター・ゴリラなど様々な動物の能力を宿しています。チーターは足が速い、ゴリラは力が強いなど、オーメダルにはそれぞれ特徴があり、仮面ライダーオーズはこれらの能力を駆使して敵と戦う設定です。

しかし、玩具の変身ベルト(約7000円)に付属しているオーメダルは4枚だけで、他のメダルで遊ぶには別売りのメダルも購入する必要があります。テレビ本編に登場したオーメダルは全部で18種類でしたが、玩具オリジナルのメダルも多数販売されました。DX版のオーメダルは3枚セットで1000円、他にガシャポン(1個300円)や食玩(1個250円)などでも販売されています。つまり、オプションアイテムの購入させる目的で、最初から本編のストーリーを構築した作品だったのです。

オーズだけでなく、近年の仮面ライダーシリーズはこのようなアイテム連動型のベルトが主流になっており、それが玩具売り上げを押し上げた大きな要因と言えます。平成仮面ライダー初期にも、龍騎やブレイドなどアイテムコレクション型の作品はありましたが、これらのアイテムは商品単価の安い「カード」だったため、売上に大きくは貢献しませんでした。

仮面ライダーシリーズの中でも、オーズは特にベルト(とオーメダル)の人気が高く、発売から半年以上ずっと品薄が続いていました。

※真偽未定の情報ですが、オーメダルの製造枚数は3300万枚にものぼり、2011年の1円・5円・50円硬貨の新規発行枚数(それぞれ45万6000枚)よりも多かった、という口コミもファンの間で語り草となっています。

仮面ライダーは、メインターゲットの子供だけでなく、大人の特撮マニアからの人気も高いです。成人のライダーオタクはお金があるので、玩具を買い占める「大人買い」するので、売上に貢献してくれます。反面、子供が沢山あるコレクションアイテムを買い揃える事はほぼ不可能であり、バンダイのやり口に対して「あくどすぎるのでは?」とか「ボッタクリ商法だ!」などと批判的な口コミも多いです。

放送時期の変更でクリスマス商戦に注力

おもちゃの売り上げが好調なもう一つの理由が、以前は1月から番組が開始していたのを9月スタートに変更した事で、クリスマス商戦でおもちゃが売れるようになった事です。初期の平成仮面ライダーは、毎年1月末という中途半端なタイミングで放送が開始されていました。

※1月にスタートする理由は、子どもは4月の進級や進学で番組を卒業してしまうケースが多いので、その少し前に新番組を開始する事で、継続して見てもらう意図があるとの事です。また、4月だと他にスタートする番組が多く、新番組の宣伝をしても埋もれてしまう可能性が高いので、競合の少ない時期を狙っていたという理由もあるようです。
【テレビ朝日のプロデューサーで仮面ライダーシリーズに関わってきた梶淳氏の談話より】

一方で、伝統的に仮面ライダーの30分前に放送され続けている「スーパー戦隊シリーズ」も、30年以上前から2月に新番組をスタートさせています。1〜2月に番組を開始する事にメリットはありますが、それ以上に二つの特撮番組で、おもちゃ商戦の時期が被るデメリットが大きいので、仮面ライダーの番組開始時期をずらす事にしたのです。

2009年放送の仮面ライダーディケイドは放送を7ヶ月で終了させ、次の仮面ライダーWからは9月から番組開始しました(2013年の仮面ライダー鎧武からは更にずれて10月開始)。以前の平成仮面ライダーの玩具は、クリスマス商戦であまり高い売上げは残せませんでした。おもちゃ屋が翌月に終了する番組の玩具を大量に仕入れたりはしないので、クリスマス商戦はいわば最後の在庫処分的な扱いでした。それがクリスマス商戦の直前に番組をスタートするようにした結果、主力商品である変身ベルトの売り上げが大きく伸びる事になったのです。

イケメン俳優を起用して母親のファンを増やす戦略も

最後に、もう一点平成ライダー躍進の理由を挙げると、出演者をイケメン俳優で固める事で、ファンを子供達の母親にまで広げた事も挙げられます。初代仮面ライダー=藤岡弘のようないかにも強そうで「濃い」キャラを排除して、あえてジャニーズ系の「優男」にすることで、イケメン好きのママ世代のハートを掴んで、親子共々ファンにするという戦略を取っているのです。

オダギリジョー、要潤、水嶋ヒロ・・・今となっては有名なイケメン俳優ですが、実は仮面ライダーシリーズの主演で名を馳せた人達であり、彼らの人気を支えたのが子供の母親達でした。見た目の強さや演技力などを無視して、イケメン優先でキャスティングする事には、オールドファンからは批判的な口コミが多いです。しかしビジネスとしては大成功しているので、当分はこの「イケメン優男ライダー」の路線は続いていくと思われます。

低視聴率な平成ライダーが成功した理由まとめ
・近年の仮面ライダーは視聴率が低いのに玩具売上は好調
・変身ベルトにコレクション性のあるアイテムを展開した
・放送開始時期を変更してクリスマス商戦に注力した
・イケメン俳優を出演させて、子供の母親達もファンに仕立てた

ちなみに、日本でのスーパー戦隊シリーズの玩具売上げは毎年100億円程度で、近年の仮面ライダーのおよそ半分しかありません。しかし世界全体で見ると、スーパー戦隊と仮面ライダーの売り上げに大差はなく、2016年度実績だと、スーパー戦隊が210億円・仮面ライダーは223億円です。スーパー戦隊の海外展開シリーズ「パワーレンジャー」がアメリカ等で好調で、バンダイナムコ社の売上に大きく貢献しています。一方、仮面ライダーは何度か海外展開を行ったものの上手くいかず、売上のほとんどは日本市場によるものです。

日本では極めて高い人気の仮面ライダーが、世界ではあまり人気がないという現状は、家電業界などと同じ「ガラパゴス現象」だといえそうます。

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