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日本の食料自給率は戦後、年を追う毎に低下してきました。1965年の食料自給率は農水省発表値で73%ありましたが、50年後の2015年にはおよそ40%にまで減少しています。自給率低下の理由は、日本人が肉や油など国内生産量が少ない食べ物を好むようになった事や、安い外国産食品の輸入が増えた事、そして高齢化社会に伴う農家の減少、などが挙げられます。
このように自給率が低下している一方で、日本からの食料品の輸出額は増加傾向にあります。以下は平成以降の、日本の農業・漁業・林業の海外への販売(輸出額)の長期推移グラフです。
データソース;農林水産省公式HP
1990年当時の輸出額は、農業・林業・水産業を全て合わせて3536億円でした。1990年代は大きな増減は見られませんが、2000年頃からは明確に増加傾向にあり、2016年は7502億円と、この25年で2倍になっています。
国内では農業の衰退や、「米離れ」だの「魚離れ」だのと危機が報道されますが、その一方で農産物や水産加工物の輸出は、着実に増えてきたのです。
では日本はどの国への輸出が多いのでしょうか?以下は、2015年の農林水産物の国別の輸出内訳を表したグラフです(データ出典;農水省公式)。
国別の輸出先ランキングは香港がトップ(24.1%)です。中国のみならずアジア各国から富裕層が集結する香港は、東南アジア諸国への輸出のテストマーケティング地となっているうえ、中国への窓口としての役目も担っています。他に輸出の多い国としては、台湾・中国・韓国など日本の近隣地域がランキング上位に来ており、アジア全体で全輸出の4分の3を占めます。
2015年の農林水産物・食品の輸出総額は7451億円で、2016年(7502億円)も含めて4年連続で過去最高を更新しています。主な農産物は、米・りんご・牛肉などで、水産物はホタテや鯖などが多くなっています。
輸出が伸びている理由は、日本産の食料品への評価の高さです。日本の食品は味に優れているだけでなく、安全性も高い事から、世界中で人気となっています。
近年は、政府が反日活動を煽動しているはずの中国や韓国で、日本食ブームが高まっているという皮肉な状況(?)が起きています。特に中国の富裕層は、自国の食料品の安全性の低さを懸念しているので、高い値段でも日本の米や肉を買う人達が増えています。
また、海外で日本食を出すレストランが多くなっている事も、輸出額が増えている理由です。日本の外食チェーン店は、国内市場が飽和状態なので、海外へ出店することで売上増加を図っている会社が増えています。寿司などの和食は元より、ラーメンや丼物のような大衆食でも、海外なら日本よりも高い値段でも客が来るからです。
例えば、ラーメン屋として株式上場も果たしている一風堂は、シンガポールで2千円前後という日本の1.5倍以上の価格で出店していますが、現地で結構な人気だそうです。
日本の農林水産業の輸出額推移まとめ
・食糧自給率の低下に反して、農業や漁業の輸出は増えている
・平成以降で、輸出額は2倍になっている
・中国など東南アジアでの日本食人気が大きな理由
実は日本政府は、2019年の農林水産物・食品の輸出額目標を1兆円と掲げています。為替レートにも左右されますが、この増加ペースだと目標達成は十分可能な金額です。
日本国内では、食糧自給率の低下が問題視されがちですが、その裏でコシヒカリや松坂牛のような高級食材・ブランド価値のある食品は、虎視眈々と海外へ販路拡大を目指しているのです。農業や漁業も結局は商売なので、儲かる相手へ物を売るようになるのは、経済合理性から当然の結末です。あえて言うなら、デフレで国内では安い食品しか売れないという状況を招いた、政治(および日銀)の責任だと言えます。