HOME > 文化と歴史 > 外国人が経営する店舗数の推移
2010年代に入り、訪日外国人観光客(インバウンド)が増えている事はご存知の通りですが、実は日本で店舗(飲食店や宿泊施設)を経営する外国人も増えています。
外国人が日本で起業する場合「投資・経営の在留資格」という届け出が必要です(2015年4月1日からは「経営・管理」に名称変更)。以下のグラフは、外国人の「投資・経営の在留資格」の保有者数の推移〜つまり日本で外国人が経営する店舗数の推移を表したものです。
※出典;法務省「出入国管理」。厳密には「投資・経営の在留資格」は、お店だけでなく一般企業なども含まれるが、大半が飲食店なのでここでは割愛。
2004年には6396人だった外国人経営者ですが、毎年1000人程度のペースで増加が続いており、2013年には1万3千人超まで倍増しています。
総務省発表のデータによると、2016年の外国人経営者の内訳は、最も多いのが中国人で約30%、次いで韓国人が約25%となっています。割合で言えば大半が飲食店、つまり中華料理屋や韓国料理屋が増えている事を意味します。
かつては韓国料理と言えば焼肉で、東京なら新大久保・大阪なら鶴橋、と限られた地域のみで発展していた韓国料理も、今や百貨店やショッピングモールに入るのが当たり前の時代になりました。 韓流ブーム(厳密には韓国政府によるロビー活動)の恩恵です。
しかし全体の伸び率からも分かる通り、韓国や中国以外の外国人経営の店も激増しています。インバウンドの増加により、様々な国の人が日本を訪れるようになったので、彼らに対応すべく様々な料理も必要になったからです。
外国人が経営するメリットとしては、各国の母国語が通じる、文化や宗教についての知識がある、といった点です。日本人の大多数は無宗教で、例えばキリスト教徒はおよそ106万人と、人口の1%にも満たない(出典;キリスト教年鑑・2012年版)ですし、ヒンズー教やイスラム教にいたっては、信者はほとんどいません。一方、世界全体では、キリスト教徒が22億5400万人、ヒンズー教徒が9億1360万人、イスラム教徒が15億人存在しています。
外国人観光客の日本でのトラブルになるケースは、食事面が特に多いです。宗教上、食べてはいけない食材が戒律で定められているからです。例えばイスラム教では豚肉が、ヒンズー教では牛肉が御法度な食材です。
特にイスラム教の戒律は厳しく、直接豚肉を食べる場合だけでなく、ゼラチンやラードなど、肉や骨などから作られた物も厳禁ですし、豚肉が触れた調理器具を使って料理した物も敬遠されます。イスラム教徒が世界で敬遠されがちなのは、何もISILのようなテロ組織が居ることだけではなく、彼らの戒律に合わせるのが極めて面倒くさいからです。
イスラム教の戒律に反しない食事は「ハラール食」と呼ばれますが、調理には厳格な基準が設けられており、対応するのは簡単ではありません。日本の経営者がハラール食を勉強して合わせていくより、元々イスラム圏で生活していた現地の経営者の方が有利な訳です。
このように、外国人観光客の多くが宗徒であるにも関わらず、日本人は宗教についての知識に乏しいため、気を配ったおもてなしを行うのは中々難しいです。各宗教や文化に精通した外国人がレストランやホテルを経営する事は、海外からの旅行客にとってもメリットが大きいです。
外国人経営者の店の推移まとめ
・外国人経営者は2004年から2013年までの約10年で倍増した
・国別の外国人経営者は、中国人と韓国人で半数以上を占める
・インバウンド増加には、言葉や宗教に精通した外国人の店が増えると有効
2016年の訪日外国人は過去最高の2400万人を記録しましたが、日本政府は東京オリンピックの2020年には4000万人のインバウンドを目標にしています。今後多くの観光客を呼び込むには、様々な文化や宗教に対応する事も必要になるので、日本人が彼らへの理解を深めるよりも、外国人経営者の店を増やす方が手っ取り早い施策だといえるでしょう。