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日本が世界に誇る文化の一つであるアニメーション。近年はクールジャパンの一環として、日本のアニメが海外展開されるようになっており、世界中で高い人気を獲得しています。以下のグラフは、日本のアニメ業界の市場規模(制作会社の売上)を表したものです。
※データ出典;情報メディア白書2017
1975年時はわずか46億円しかなかった市場規模は、1990年頃から急激に拡大し、2015年には2520億円にまで成長しています。しかも、この数字はあくまでもアニメ制作会社の売上ベースによる市場規模です。エンドユーザーの支払額ベース(DVDなどのビデオ販売、劇場版の興行収入、音楽CDやライブの売上など)では1兆2000〜3000億円になります。
ちなみに、2015年の日本ゲーム業界の市場規模はおよそ1兆8000億円です。アニメ市場はゲーム市場にはやや及ばないものの、日本の一大エンタメ産業である事は間違いありません。
アニメ市場が拡大している理由は、テレビアニメの放送数が格段に増えている事が大きいです。1975年に放送がスタートしたテレビアニメ(前年から放送が続いている作品は除く)の数は23作でした。それに対し、2015年スタートのテレビアニメは200にものぼります。つまりこの40年で、年間のアニメの放送数は10倍近くに増えているという事であり、それに伴って市場規模も拡大しているのです。
また、視聴者の年齢層が広がった事も、市場拡大に繋がっています。昔のアニメは、基本的に子供がターゲットであり、大人が視聴する作品は少なかったです。しかし、近年は少子化で子供の数が少なくなってきた事もあり、大人(オタク)をターゲットにした作品が主流となりました。
実際、最近のアニメはほとんどが深夜に放送されており、ゴールデンタイムに放送されているのは、ドラえもんやクレヨンしんちゃんなどごく一部の作品しかありません。自由にお金を使えない子供と違い、熱狂的なアニメオタクは自分の好きな作品にお金を払う事には躊躇しません。こうした大人のアニメオタクが、市場規模拡大に貢献しているのです。
ただし、アニメの数が増えた事で視聴者の奪い合いが激しくなっており、1作品当たりの売上は減少しています。2010年時点では、アニメ会社の年間コンテンツ制作数は平均10作程度でしたが、2015年には20を超えています。しかし、1作品当たりの単価は2億円前後で、横ばい〜縮小傾向にあります。
近年のアニメは、1〜2クール(3ヶ月〜半年)で展開される作品が大半であり、数年にわたって放送が続いている作品は極めて少ないです。この短期間で利益を得るには、DVDやブルーレイなどのビデオ販売が重要になります。アニメ業界は、ディスクが1万枚売れれば大ヒットという世界ですが、ほとんどのアニメは2000〜3000枚程度に止まっており、不人気作の場合は数百枚というケースも見受けられます。
アニメの制作費は作品によって大きく変わりますが、1話当たり1000万〜2000万円程度の場合が多いです。この制作費を回収するには、DVDの売上が数百枚では全く不十分です。こうした不採算作品の損失を補うために、作品数を増やして無理やりカバーしているのが、アニメ業界の実情です。深夜枠なので、ネットの口コミが宣伝の頼みなので、失敗すると散々に終わる厳しい世界となっています。
日本のアニメ業界の市場規模
・日本のアニメ市場規模は拡大している
・昔と比べてアニメの放送本数が格段に増えた事が理由
・ただし1作当たりの売上は減少している
このように、アニメ市場規模は数字上拡大はしているものの、内情は逼迫しています。1兆円を超える市場規模のうち、大半は広告代理店などに中抜きされており、制作会社が得られる利益はわずかだという口コミが支配的です。中でも、アニメーターや若手の声優はギャラが少なく、使い捨て前提でこき使われている状況が大きな問題となっています。
※岡田斗司夫×赤井孝美対談。地方アニメスタジオの可能性(1:04あたり)
一つの方法として、上記のように物価の安い地方にアニメスタジオを作るなんて案も、検証されているようです。制作側にも利益が回る仕組みに改善していかない限り、近い将来日本のアニメ業界は崩壊するリスクもあります。