HOME > 文化と歴史 > 大卒者の就職率推移
日本では、大学進学率は年々増加傾向にあります。1997年の大学進学率はおよそ45%でしたが、2016年には55%程度にまで上昇しています。長引く不況での影響で「高卒では就職が難しい」と学生達が感じているのでしょうか、低学歴の高校からも大学へ進学する生徒が増えているとの事です。少子化の影響で、2017年度は私大の40%以上が定員割れとなっている「大学全入時代」である事も後押ししています。
そこで厚生労働省の発表を元に、過去20年間の大卒者の就職率推移を表したグラフを作ってみました。数字は就職を希望している学生の中で、実際に就職出来た人の割合で、大学院への進学希望者や就職する気がない人(家事手伝いの女性)は含まれていません。グラフのデータは毎年4月1日のものであり、その時点で就職希望をしていなければ、集計には含まれない事になります。また、数値は内定者でなく、実際に就職した人数を基に算出しています。
2016年の大卒就職率は97.3%で、2008年のリーマンショック前の水準(96.9%)を上回る、過去最高の数字となっています。テレビでは「景気回復の実感が無い」という街頭インタビューが頻繁に放映されますが、あのような口コミは間違いです。大卒者の就職率は、2011年の東日本大震災時のボトム(91.0%)から、アベノミクスを経て上昇しており、日本の景気が確実に上向いて雇用環境が改善している証拠です。
意外なデータとして、男女比で見ると男96.7%・女98.0%と、女性の方が就職率が高くなっています。2012年までは男性の方が就職率が高かったのですが、ここ数年で逆転現象が起きています。厚生労働省によると、近年は介護や医療分野の求人が増えた事で女性の採用が高まり、製造業など男性向けの職場での雇用が減少した事が、就職率に影響を与えたとの事です。
上記の通り、データはその年の4月1日時点での集計です。つまり卒業したのに就職していないと、以後は新卒ではなく既卒と扱われるため、新卒至上主義・雇用の流動性が乏しい日本では就職活動が不利になります。そのため、就職が決まっていない大学生はわざと留年したり、大学院に進学するなどして、新卒カードを失わないようにする学生も少なくないようです。
しかし、上記のように近年は未曾有の売り手市場〜労働者に有利な環境なので、わざわざ1年留年して就職活動を続ける事は馬鹿げています。現在は少子化で大学全入時代となっているので、かつてよりも「大卒者」というブランド力は薄れています。ましてや、誰でも入れる偏差値40とかのFラン大学の新卒カードなど、はっきり言って無価値です!
留年などしても学費と時間の無駄なので、中小企業でも妥協して就職する事を、強くお勧めします。社会に出るのが1年延びれば、生涯賃金も確実に数百万円減ることになります。馬鹿な先輩・同級生の口コミに惑わされず、身の丈にあった就職を考えるべきですよ。
★関連サイト;中小企業に就職するメリットとデメリット
ちなみに、文部科学省が発表した、就職を希望していない人も含めた全卒業者に占める就職者の割合は、2016年3月では74.7%との事です。
大卒者の就職率推移まとめ
・2016年の大卒者就職率は97.3%で過去最高
・近年は男性よりも女性の方が就職率が高くなっている
・ゆえに「新卒カード」に拘ってわざと留年するのは間違い!
なお厚生労働省のデータによると、2012年以降の高等専門学校卒業者の就職率は100%になっています。高等専門学校では、主に工学系の専門技術が身に付けられるため、企業側から即戦力として期待されている事が、高い就職率に繋がっている理由です。
但し、数字は少数のサンプルを基に全体の割合を算出しているから100%となるだけで、実際に全員が漏れなく就職した・・・なんて事はありえないのは、言うまでもありません。 テレビの視聴率などもそうですが、少数のサンプルから算出する統計データは、マイナーな存在がもみ消されている可能性があるので、参考にする場合には注意が必要ですね。