HOME > 文化と歴史 > 日本へのクルーズ船の寄港数推移
近年の日本は、インバウンド(外国人観光客)が激増しています。外国人観光客の大半は飛行機を利用しますが、豪華客船でのクルーズを楽しみながら来日する富裕層も多くなっています。以下は、日本へ寄港するクルーズ船の推移を表したグラフです。
クルーズ船には、海外から外国人観光客を乗せて日本に来る「外国籍」の船と、主に日本人を乗せて国内の港を発着する「日本籍」の船に大別されます。
2005年から約10年は、クルーズ船の年間寄港数は1000回前後でしたが、2014年頃から大きく増え始め、2018年には2928回と、5年間でおよそ3倍になっています。特に外国籍のクルーズ船が増えており、インバウンドの増加に伴った推移である事が分かります。
そして以下は、クルーズ船の到着が多い日本の港のランキングです。ランキングの上位は、博多・佐世保・長崎など九州の港と、沖縄(那覇・石垣)が占めています。
クルーズ船の寄港地ランキング(2018年) | |||
順位 | 港湾名 | 回数 | 前年比 |
1 | 博多 | 279 | -47 |
2 | 那覇 | 243 | +19 |
3 | 長崎 | 220 | -47 |
4 | 横浜 | 168 | -10 |
5 | 平良 | 143 | +13 |
6 | 神戸 | 135 | +19 |
7 | ベラビスタマリーナ | 122 | なし |
8 | 佐世保 | 108 | +24 |
9 | 石垣 | 107 | -25 |
10 | 鹿児島 | 100 | -8 |
- | その他 | 1303 | +170 |
計 | 合計 | 2928 | +164 |
※ベラビスタマリーナ:広島県尾道市にあるリゾート施設「ベラビスタ スパ&マリーナ尾道」が所有する私営の港。
九州や沖縄が多い理由は、地理的に近い中国や台湾からのクルーズ船が多い事が理由です。2018年の訪日クルーズ船の旅客数は244.6万人ですが、その8割以上となる202万人が中国人です(次が31万人の台湾)。飛行機によるインバウンドも中国が最多ではありますが、対全体比で2割台なので、船ほどは偏ってはいません。
クルーズ船による外国人観光客は、イコール中国人だと言っても差し支えない状況なのです。そして、この点を危惧する余り、インバウンド全てを否定するような専門家まで現れる始末です。
上記の動画で指摘されるように、確かに船による入国は、飛行機を使ったものと比較してチェックが甘く、クルーズツアーから脱走して不法滞在する輩も出てしまう事は事実です。
だからといって、インバウンドが増える事自体を「けしからん!」と全否定するのは、時代錯誤も甚だしい暴論です。日本は人口減少が確実なので、そのままでは経済が縮小する事は確実です。外国人観光客による消費は、GDPの増加要因(しかもGDPの1%近い水準)なので、今後の日本経済を支えるのに不可欠だと言える存在です。
★関連ページ;インバウンド(訪日観光客)の市場規模と内訳
北朝鮮の如く鎖国する覚悟ならいざ知らず、現在のグローバル社会で国際観光客を拒否することは不可能です。国家や民間企業が法律・規律を強化して秩序を保てばよい訳で、インバウンド全てを否定するのは完全にお門違いです。日本は今後も、様々なトラブルが起きようとも、外国人観光客と上手に付き合っていくしかないのです。そんな事はアメリカも欧州各国も、それこそ中国自身も含め、大国はどこの国も経験している事なのですから。
日本へのクルーズ船の寄港数推移まとめ
・日本へのクルーズ船の寄港数は増加傾向にある
・海外からのクルーズ船の8割以上は中国人
・寄港数ランキング上位は、博多・長崎など九州が多い
博多や長崎など九州の寄港回数は多いとはいえ、前年比ではマイナスになっています。中国からのクルーズ船が人気が高いため、船便会社間での価格競争が激しく消耗戦となり、便数が減少に転じたとされています。このような需要の浮き沈み問題もありますが、それでも海外からの観光需要は、日本経済にとって必要な存在なのです。