HOME > 文化と歴史 > マンガの発行部数推移
日本は世界に誇るマンガ大国です。2017年現在、少年向けのジャンプやマガジンをはじめ、なかよしやリボンなどの少女マンガ、ビッグコミックやモーニングなどの青年・大人向けの雑誌、小学生に絶大な人気のあるコロコロコミックなど、日本で1ヶ月に発売されるマンガ雑誌の種類はおよそ130もあります。これだけ多くのマンガが販売される国は、世界でも類を見ません。
ですが、近年はマンガの市場規模が減少傾向にあります。そこで日本のマンガの発行部数を表したグラフを作成しました。赤と青の棒グラフは、雑誌および単行本の販売金額を表しています(上軸)。黄色の折れ線グラフは、雑誌と単行本の販売部数です(下軸)。
※ソース;情報メディア白書2017
2015年のマンガ販売金額は3268億円で、内訳は雑誌が1166億円、単行本は2102億円でした。マンガの市場規模がピーク時だったのは1995年(5864億円)で、以後は年々減少が続いています。発行部数も2015年は7億5000万冊で、1980年代の水準にまで落ち込んでいます。
減少が続く最大の理由が、日本の少子化です。近年は大人をターゲットにしたマンガ雑誌も多数存在しますし、また少年ジャンプは大人の読者も多い事で知られていますが、それでもマンガのメイン読者はやはり子供であり、少子化の影響は大きいと考えられます。
またネットの普及に伴って、違法ダウンロードが増加した事も、発行部数が縮小している大きな原因です。2016年末に開設された海賊版サイト「フリーブックス」は、ワンピースなどの人気マンガを無料で閲覧出来る事で多くのユーザーを集めました。現在フリーブックスは既に閉鎖していますが、出版社の被害総額は1ヶ月で100億円に達していたと試算されています。フリーブックスに限らず、こうした違法サイトは中国など世界中に数多く存在しており、マンガ業界に深刻な影響を与えています。
ところで、1995年といえば週刊少年ジャンプの最盛期であり、3-4合併号は、653万部という前人未到の発行部数を記録しています。しかし、1995〜96年にかけて、ドラゴンボールやスラムダンクなど人気作が相次いで連載を終了した事に伴って、ジャンプの人気は急落、発行部数はマガジンに抜かれて2位に転落する窮地に陥りました。ジャンプの衰退と、マンガ市場の縮小は見事にリンクしています。
★関連ページ;4大マンガ雑誌(少年ジャンプなど)の発行部数推移
このように、マンガ雑誌の販売金額は1995年以降減少が続いているものの、単行本(コミック)については大きな落ち込みにはなっていません。2003年までの販売金額は、雑誌が単行本を上回っていましたが、2004年にそれが逆転し、以後は単行本の方が多い事が常識となりました。マンガ雑誌は複数の作品が掲載されていますが、それを全部読んでいる人は少ないです。ゆえに近年の読者は、雑誌を買わずに自分の好きなマンガだけ単行本を買う、というスタイルが増えていると言えます。
事実、近年の週刊少年ジャンプの発行部数は200万部程度ですが、ワンピースのコミックは初版で300〜400万部が発行されている事からも、読者の雑誌離れが窺えます。
マンガの市場規模推移まとめ
・マンガの市場規模は、1995年をピークに減少している
・ドラゴンボールの連載終了などで、ジャンプの勢いが落ちたのが大きな理由
・2004年以降は単行本が雑誌を上回っている
ちなみに、2015年における電子書籍版マンガの市場規模は1169億円であり、紙媒体の3268億円と合計すると、全体では4437億円となります。近年は紙媒体のマンガ販売金額は減少しているものの、その穴を電子書籍が埋める形になっているという事です。単行本はコレクション感覚で買い揃える読者が多いですが、雑誌は読み捨てされる事が多いので、電子書籍の方が読者も出版社にもメリットがあります。ゆえに今後は、マンガの電子版への移行が更に進んでいくと予想されます。