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プロ野球・12球団の平均年俸推移

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近年では、フィギュアスケートや卓球など、様々なスポーツがエンタメコンテンツとしてテレビやネットで中継されるようになりました。人々の趣味・嗜好の多様化を現す典型例ですが、そんな中でもプロ野球の人気は相変わらず高いです。2000年代に入り、イチローや松坂などスター選手が次々に米メジャーリーグに流出し「プロ野球はオワコンだ」などと嘆きの口コミも蔓延しましたが、今でもプロ野球は、日本で最強のスポーツコンテンツとして君臨し続けています。

プロ野球が王様であり続けられるのは、運動神経の良い子供達が、部活で野球を先行する事が多いからでしょう。野球はプロスポーツの中でも圧倒的な高収入が見込めるため、親御さん達も子供に夢を託しやすいので、より野球をやる事を後押ししがちです。

以下は1980年以降の、日本プロ野球界(NPB)の平均年俸の推移を表したグラフです。ソースは日本プロ野球選手会の発表で、外国人選手を除く全支配下公示選手の平均値です(表内の数値は12球団の平均年俸(万円)です)。

1980年は王貞治が引退した年であり、日本のプロ野球における一つの時代が終わった節目の年です。全選手の平均年俸は602万円でした。1980年当時は、大卒初任給が11.8万円ほど(現在の6割ほどの水準)で、消費者物価指数も近年の75〜80%ほどの水準だったので、現在の貨幣価値に直せば1千万円前後と推計できます。それでも近年(約3800万円)の4分の1くらいの年俸ですから、当時のプロ野球選手はさほど高給取りでもなかったわけです。

但し、プロ野球選手だけが不遇だった訳でもありませんし、日本だけの傾向でもありません。当時はメジャーリーグもようやく年俸100万ドルプレーヤーが生まれたばかり(※注)でしたし、サッカーのマラドーナやゴルフのジャック・ニクラウスなど、他のスポーツでも現在の選手達のような高給取りではありませんでした。当時はスポーツビジネスがまだ過渡期で、球団・主宰者がマネタイズのノウハウが薄かったのです。

※注;ノーラン・ライアン投手が1979年にアストロズと契約した4年=440万ドルの契約を結び、大リーグ史上初の年俸100万ドルプレーヤーとなりました。ライアンは通算奪三振やノーヒットノーラン(7回)など数多くの大リーグ記録を持ち、また剛速球がギネス記録として登録される(時速100.9マイル(約162キロ))など、人気・実力共に球界を代表する投手でした。

1990年代は巨人の年俸がダントツだった

また1980年代と言えば、パリーグは観客が少なくいつもガラガラ・・・というイメージを持つ人が多いでしょうが、意外な事に平均年俸はセリーグとほぼ変わりません。ロッテの本拠地・川崎球場があまりにガラガラなので、球場で麻雀や流しそうめんを行う客までいた事が現在でもネタにされています。しかし、ロッテやパリーグだけが酷かった訳ではなく、セリーグの5球団とて巨人戦以外は客席はガラガラというのが日常でした。地方ではプロ野球のテレビ中継は巨人戦のみという地域がほとんどで、王・長嶋が引退してもなお、球界は巨人中心に回っていたのです。

1987年に落合博満が日本プロ野球初の1億円プレーヤーになった辺りから、プロ野球選手の年俸も急激に伸びていきました。バブル景気という後押しもありましたが、平成に入る頃から企業の宣伝広告費が急進し、テレビ放映権料や球場内広告などの収入が伸びた事が一因です。特に、ミスタープロ野球=長嶋茂雄の監督復帰&松井秀喜の登場に沸いた巨人は、1990年代に他球団の追随を許さない、ダントツの高年俸を誇りました。

一方、パリーグも選手の年俸は伸びましたが、球団の収益はさほど伸びておらず経営を圧迫し始めます。2004年にはダイエーがソフトバンクへ球団の身売りを行い、また経営難の近鉄がオリックスとの合併を発表し、プロ野球再編問題に発展しました。一時はナベツネ主導で1リーグへの球界再編の流れも生まれかけましたが、選手会のストライキやファンの反発などで頓挫、楽天イーグルスの誕生で2リーグ12球団の維持が決まり、今日に至っています。

ちなみに上記グラフ(2015年時点)では、巨人の年俸がダントツで1位ですが、2016年にはソフトバンクが逆転しています。巨人は高橋由伸の引退、阿部慎之助や杉内俊哉らベテラン勢の年俸大幅ダウンなどが影響し、ソフトバンクは前年優勝して柳田悠岐ら大活躍した選手の年俸が跳ね上がったからです。

今後は巨人や阪神、ソフトバンクら高額年俸球団と、広島や日ハムなど節約経営のチームとに二極化していくと思われます。但し後述するように、後者の球団の未来が暗い訳でもありません。

プロ野球も地域密着型経営で活路を開いたが・・・

2004年の再編スト問題以降、日本のプロ野球は地域密着型の運営で、経営健全化へと向かいはじめます。福岡のソフトバンク、北海道の日本ハム、仙台の楽天、千葉のロッテ・・・などと地元から支持される球団経営で毎試合数万人の観客を集め、かつてのガラガラのスタンドとは一変しました。地方のテレビ局では、巨人戦中継が消える代わりに地元が近いチームの中継が増え、地域にファンが拡大しました。

野球に限らず、近年の日本のスポーツチーム経営ビジネスは、サッカーJリーグのアルビレックス新潟の手法がモデルケースとなっています。アルビレックス新潟は、スター選手不在・親会社に資金力がある訳でもないのに、3万人以上の観客を常時集める大成功をおさめましたが、その戦略は地元に愛されるチーム作りを徹底的に優先することでした。ホークスが九州に、ファイターズが北海道に移転した選択は、最初は「失敗だ」と揶揄されましたが、結果的には地域で圧倒的に支持される存在になり、今では明らかに成功だったと言えるまでになりました。

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巨人一極集中だったプロ野球は、球団が各地方にフランチャイズ化して根ざす事で、新たなステージに入ったのです。他のスポーツ・・・米大リーグや欧州サッカーリーグなども、一部の巨大資本球団をのぞけば、全て地域密着型のファン作りをベースにして経営されています。ヤンキースやレアルマドリードなど、高額年俸で有力選手をかき集める球団に対し、オラが街のチームが挑み、金はないけどファンが熱心に声援を送って下克上を後押しする・・・そんな構図が世界中のスポーツの基本となっています。

プロ野球・12球団の平均年俸推移まとめ
・1980年の平均年俸は602万円だったが、2015年は3812万円に増加
・昔も今も、セリーグとパリーグで年俸格差はほぼ無い
・近年は地域密着で経営再建したが、メジャーへの選手流出対策が急務

但し、日本のプロ野球が安泰なのか?と言えば、全くそうではありません。今後も大谷翔平をはじめ、多くのスター選手が大リーグに流出し続けるでしょう。その流れを止めるのは不可能なので、サッカーの移籍金のように日本の球団にもお金が落ちるシステムを整えなければ、いずれNPBはMLBに選手を供給するだけの「マイナーリーグ」と化すでしょう。

日ハムや広島カープなどは、高額年俸の選手のFAや海外移籍に対して「去る者追わず」のスタンスを貫き成功していますが、全ての球団が同じスタイルを取れるとは思いません(特に巨人)。NPBの経営は、年俸の高騰よりもメジャーへの選手流出の対策の方が、はるかに重要です。

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