HOME > 経済 > IHヒーターのメーカー別シェアと普及率
近年、IHクッキングヒーターを導入する家庭が増加傾向にあります。日本で初めてIHが発売されたのは1974年ですが、当時はまだ技術的に未熟で火力が弱いなどデメリットが多く、普及率は高まりませんでした。しかし、1990年代から問題の改善が進み、徐々にガスコンロのシェアを奪ってきています。
以下は、2015年のIHクッキングヒーターのメーカー別シェアを表したグラフです。同年における国内販売台数は、およそ70万台でした。
1位はパナソニックで、シェアは54.8%と半数を超えています。2位は日立の27%、3位は三菱の16.8%で、IHクッキングヒーター市場は2015年時点で3社に寡占化されています。ここまでシェアが偏っている家電製品は珍しいです。
★主な家電製品の市場シェア;テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、パソコン
以前はシャープや東芝などのメーカーもIHクッキングヒーターの生産を行っていましたが、シャープは2013年を最後に撤退、東芝も2013年からは卓上小型IH調理器のみを展開するようになっています。日本の家電メーカーは収益悪化が深刻で、テレビ事業の撤退のように事業の選択と集中が相次いでいるので、IHヒーター市場もパナソニック・日立・三菱の3社による寡占化が続くと予測されます。
以下の表は、キッチンで使われる主な家電製品の普及率です。IHクッキングヒーターの世帯普及率は2014年時点で23.9%と、4世帯に1台程度まで増加してきています。
主なキッチン家電の普及率(二人以上世帯) | |||
家電の種類 | 2009年時点 | 2014年時点 | 増加率 |
IHクッキングヒーター | 18.2% | 23.9% | 5.7% |
炊飯器 | 82.8 | 89.0 | 6.2 |
食器洗い機 | 26.9 | 31.0 | 4.1 |
冷蔵庫 | 98.7 | 98.9 | 0.2 |
IHヒーターは、電気エネルギーで鍋やフライパン自体を発熱させる仕組みです。コンロ本体は熱を発しないので、夏の暑い時期でも快適に調理できることが最大のメリットです。他にも、火を使わないためガスコンロのような火事の心配がほぼ無い、ガス漏れのリスクはゼロ、掃除は天板を拭くだけで良いので簡単、など様々なメリットがあります。
日本の家庭では、光熱費を全て電気によって賄う「オール電化」も普及しています。これまでの家庭の光熱費は、電気とガスでそれぞれ基本料金を支払うのが一般的でしたが、これを電気に一括する事でコストが削減できるのです。しかもオール電化は、夜間の料金が安く設定されるシステムなので、夜間にお湯を沸かしてタンクに溜めたり、蓄熱しておく事で、日中の電気代も節約できるというメリットがあります。
また近年は、太陽光発電や電気自動車を購入する家庭も増えています。蓄電などによる電力の効率化=スマートグリッドは、政府の重点政策の一つでもあるので、オール電化やIHヒーターの普及率もさらに増加していくと推測されます。
IHクッキングヒーターのシェアと普及率まとめ
・IHはパナソニック・日立・三菱の3社で市場を寡占している
・火事やガス漏れのリスクが無い事や、調理で暑くない事もメリット
・スマートグリッド政策やオール電化により、IHの普及率も増加傾向
一方で、IHクッキングヒーターにはデメリットもあります。例えば、使用できる調理器具は鉄やステンレスなどIHに対応した材質のみで、アルミや銅の物は不可です。IHは導入のコストも高額ですが、そのうえ調理器具まで買い換える必要があるのは欠点と言えます。また、チャーハンのように鍋を振るメニューの調理にも向いていませんし、停電時に使用できないのも欠点です。