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日本の小売業界の市場規模比較

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日本の小売業は町の商店街が中心でしたが、高度経済成長期にダイエーを元祖とするスーパーマーケットが登場して、業界地図が一変しました。そして昭和末期から平成にかけて、セブンイレブンやローソンなどのコンビニエンスストアが普及し、食料品や日用雑貨が24時間いつでも購入出来るようになりました。創業当初はカメラ専門店だったビックカメラやヨドバシカメラが、テレビや冷蔵庫などの電化製品を取り扱う「家電量販店」として規模を拡大。近年では、インターネットの普及でアマゾンや楽天などネット通販の利用者が急増しています。

このように戦後の日本の小売業界は、大きく変化してきました。2015年における、小売業界の業態別の市場規模(売上高)を比較したグラフを作ってみました。

日本の小売業界の市場規模比較グラフ

日本の小売業界で最も市場規模が大きいのは、スーパーマーケットで約18.9兆円です。近年は野菜や肉などを販売するコンビニも増えており、またネット通販でも食品を買えるようになってきましたが、大多数の主婦は今でも日々の食材を身近なスーパーで購入しています。

格安なプライベートブランド商品(トップバリュなど)や、ポイントカードによる顧客の囲い込み(WAONなど)により、主婦層の支持を掴むというビジネスモデルが、未だにスーパーの市場規模が最大である理由といえます。

次いで大きいのが、売上高13兆7746億円のネット通販(EC)で、小売業の中でも最も成長率が高い業界です。ネット通販は全国どこでも商品が買えるメリットがあり、デパートや大型家電量販店が無い田舎の人にとっては、特にありがたい存在です。黎明期にはアマゾンの書籍程度だったのが、家電製品や保険・証券に拡大し、近年は洋服や食料品そして自動車に至るまで、今やネットで買えない物はほとんど無い・・・という位にまで市場が拡大しています。

反面、ネット通販利用者の増加で、ヤマト運輸や佐川急便など宅配業者の負担が増大しており、ブラック労働を生む要因になっているという負の側面も指摘されます。

異業種の商品を販売することで売上を伸ばしている

ランキング3位は、売上高10兆8908億円のコンビニです。2018年現在、日本全国のコンビニはおよそ5万6千店舗存在し、中でも業界最大手のセブンイレブンは、日本の小売業界で初の2万店を突破しました。最近のコンビニは、商品の販売だけでなく、24時間稼働の銀行ATMや公共料金の支払い、宅配便の受け取りなど多様なニーズに対応し、利便性は飛躍的に増しました。

一方で、フランチャイズ店舗のオーナーの過酷な労働環境や、季節物の商品販売ノルマをアルバイトにまで押しつけるビジネスモデルなど、社会問題化した事も少なくありません。

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これら新興勢力に押され、高度経済成長期には日本の小売業界の覇者であった百貨店(デパート)は、衰退産業と化してしまいました。年間売上高のピークは、バブル期だった1990年の約12兆円なので、平成以降で約半分の市場規模まで落ち込んだのです。ネットでは「百貨店のビジネスモデルは既にオワコンだ」という口コミが支配的です。

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ドラッグストア業界の売上高は6兆1325億円です。市場規模は年々増加しており、2000年の2兆5000億円から15年でおよそ2.5倍に拡大しています。ドラッグストアは、元を辿れば医薬品の販売店ですが、近年は食料品や日用雑貨なども取り揃えており、コンビニ化している店舗も多いです。ドラッグストアの成長の原動力もやはり、多様な品揃えになった事が理由です。

家電量販店の売上高は5兆3266億円と、他の小売業種と比較して大きくないですが、市場規模はここ10年間ほぼ変わっていません(⇒家電量販店の市場規模と企業シェア)。ネット通販の台頭を考えると、市場規模が大きく減少していない事は健闘していると言えます。最近の家電量販店は、電化製品だけでなく、食料品、服飾品、化粧品なども販売し、遂には住宅のリフォームまで行うようになっており、家電の売上減少を補うビジネスモデルを取っています。

小売業界の市場規模比較まとめ
・小売業界で最も売上高が大きいのはスーパーマーケット
・アマゾンなどのネット通販は市場規模が急拡大している
・どの業界も異業種の商品へ品揃えを拡大するビジネスモデル

このように、日本の小売業界では業界の垣根が無くなり、異業種の商品も売ることが常識化してきています。一方で、ネット通販(宅配会社)やコンビニなど、ブラック労働の温床を生んでいる原因だとも受け取れます。

日本は人口減少が確実な衰退社会なので、内需型産業は基本的に「縮みゆくパイの奪い合い」を余儀なくされます。一方で家電量販店やドラッグストアは、外国人観光客の財布を取り込むことで、売上を伸ばしている側面もあります。日本の小売業界は、多業種の売上を奪うことばかり考えず、外需の取り込みに力を入れるべきではないでしょうか?

 
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