HOME > 農林水産業 > 世界各国の道路延長と舗装率の比較
一般論として、日本では「道路が無駄に造られすぎだ!」とよく言われます。かつて北海道の利権政治家・鈴木宗男氏の追求で「車より熊の方が多い」と揶揄された事は有名です。そこで検証のために、日本と世界の主要国の道路事情を比較してみました。
世界各国の道路総延長と舗装率 | |||
国名 | 道路の総距離 | 舗装率 | 道路密度 |
日本 | 121万km | 81.2% | 3.26平方km |
中国 | 423万 | 66.0 | 0.44 |
韓国 | 10万 | 83.4 | 1.06 |
インド | 486万 | 55.5 | 1.48 |
シンガポール | 3400 | 100.0 | 4.83 |
アメリカ | 658万 | 67.4 | 0.67 |
イギリス | 42万 | 100.0 | 1.73 |
イタリア | 48万 | 100.0 | 1.62 |
ドイツ | 64万 | --- | 1.80 |
フランス | 106万 | 100.0 | 1.94 |
ロシア | 128万 | 72.3 | 0.08 |
オーストラリア | 90万 | --- | 0.12 |
ブラジル | 158万 | 13.9 | 0.19 |
エジプト | 13万 | 92.2 | 0.14 |
ケニア | 16万 | 7.0 | 0.28 |
南アフリカ | 36万 | 17.3 | 0.30 |
★ソース:世界国勢図会(2015〜16年版)
日本の道路延長は121万km(地球30周分に相当)で、世界第6位の長さです。ただし、日本より道路延長の長い国は、全て国土も日本より広く、例えばアメリカや中国の面積は日本と比較しておよそ25倍もあります。面積当たりで見れば、日本の方が道路が過剰な訳です。
この事を数値化した「道路密度」を比較すれば一目瞭然です。道路密度とは文字通り、面積当たりの道路の長さを示すものです。日本の道路密度は3.26平方kmと、主要国の中では突出して高いです。ドイツやフランスなどのヨーロッパ先進国の約2倍で、日本より道路密度が高いのはシンガポール(※)だけです。
※シンガポールの国土はおよそ720平方kmで、東京23区よりやや広い程度の小さな国です。但し人口密度が6700人/km²と世界で2番目に高く(日本は330人/km²程度)、国全体が計画都市として開発されているため、道路密度が高いのです。ちなみに道路舗装率も100%です。
日本に道路がこれだけ沢山作られた原因は、1970年代に総理大臣を務めた田中角栄による「日本列島改造論」がきっかけです。これは、日本全体に高速道路や新幹線などを開通させ、地域格差を無くすという地域振興政策です。この計画によって、日本では数多くの道路建設が行われ、都市部だけでなく田舎までも道路が整備されるようになりました。
反面、現在でも道路整備が過剰に続けられており、ほとんど利用されずに過疎化している高速道路も多いです。そもそもこの政策は、建設業界と関係が深かった田中角栄の「利権政治」だった訳で、後々の自民党・道路族議員に繋がる悪しき前例となりました。
また日本の舗装率は81.2%で、大部分の道路はアスファルトで舗装されています。ですが世界と比較すると、日本よりも舗装率が高い国はわりと多く、中にはイギリスやイタリアのように100%という国もあります。
※舗装率は国道などの「公道」が対象で、私有地の道路(田んぼのあぜ道など)は対象外です。
海外、特にヨーロッパで道路舗装率が高いのは、馬車の文化が関係しています。ヨーロッパでは古代から馬車が重宝されており、移動や運搬(あるいは戦争時)に欠かせないものでした。馬車は舗装された道でなければ走行できないので、ヨーロッパでは古くから石畳などの整備が進んでいたのです。
一方で、日本では歴史上あまり馬車が利用されなかったため、明治時代以前までは道路舗装の必要性が薄かった・・・という事情があるのです。
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また新興国は(経済発展の遅れから)全般的に舗装率が低く、中国やインドなど国土が広い国ほどその傾向が強いです。例外はエジプトで、道路延長こそ13万kmと短いですが、舗装率は92.2%と新興国では飛び抜けて高いです。エジプトは天然のアスファルトが資源として豊富であり、かつてはミイラの腐敗防止のために用いられ たという歴史もあります。この天然アスファルトが、道路整備としても使われているのです。
世界各国の道路総延長や密度・舗装率の比較まとめ
・日本の道路延長は121万kmで世界第6位
・日本は国土が狭いのに道路が多い(密度が高い)
・土建屋と癒着した道路族議員が過剰建設に拍車を掛けた
なお、日本は通勤や通学で電車を利用する人が多く、世界の乗降客数が多い駅ランキングでは、新宿や渋谷など日本の駅が上位を占めています。このように、日本は世界で最も電車の利用者が多い(=鉄道インフラが十分整っている)にも関わらず、道路密度も海外より高い訳です。この点からも、日本の道路整備は過剰ではないのか?と問題視されるのです。