HOME > 国と地域 > フィリピンの人口推移と将来予測
フィリピンは日本と国境を接する国であるにも関わらず、韓国や中国のように世間を騒がせる事はほとんどありません。2016年にドゥテルテ大統領が就任し、その強引で独裁的な手法が話題になりましたが、話題はそれっきりです。普通の日本人に「各国の前の国家首脳は誰か?」と問えば、オバマや胡錦涛やパククネの名は出てきても、フィリピンの前任者は誰なのかなど、誰も答えられないでしょう。
ですがフィリピンは、新興国の中でも将来が非常に有望視される国の一つで、人口が急激に増加している事が理由です。以下はフィリピンの人口推移と将来の予測です。2015年まではIMF発表の数値、2020年以降は国連の予想値(中位予測)です。
フィリピンの人口は2015年に1億人を越えました。日本の人口は減少に転じており、国連の中位予測では2029年頃にフィリピンに逆転される見込みです。
フィリピンの人口は1980年にはまだ5千万人弱(韓国と同程度)だったので、ここ30年ほどで急激に増加したことになります。これは、出生率がアジア諸国の中でも特に高いことが理由です。フィリピンの出生率は中国以上に高く、1980年には「5」を超えていました!2000年代以降は減少していますが、2015年でもまだ「2.94」とまだ高い水準です。
近年のフィリピンは、20世紀後半に生まれた世代が結婚出産期に当たっていたので、人口がねずみ算式に激増していたのです。日本の「団塊の世代」やアメリカの「ベビーブーム」同様の人口増加ラッシュが、20世紀末以降のフィリピンにも起きていた訳です。
フィリピンの首都=マニラ市は、単体では人口200万人足らずですが、周辺都市も含めた「首都圏都市(広さは東京23区程度)」としての人口は約1200万人〜2400万人(※注)と、韓国・ソウルやインドネシア・ジャカルタなどと共に、世界ランキングトップ10に入る巨大都市です。
※注;首都圏の定義は研究機関により違いが大きいので、このような誤差が生じる。ちなみに、ほとんどの統計で首都圏人口ランキングが世界一なのは東京となっています。
そしてフィリピンは、分類上「新興国」に属しますが、他のアジアの新興国よりも一人当たりGDPがかなり低い部類に入ります。つまり、まだ相当に発展途上の国だと言うことです。
但し、それだけ伸びしろが大きい国だとも言える訳です。投資の世界では、経済が成熟した先進国よりも、新興国の方が、株価上昇率が高い傾向があります。長期的にみれば、投資収益はその国の経済成長率と比例するからです。JETROの統計によると、フィリピンには日系企業も4500社以上が進出しています(韓国やベトナム等よりずっと多い)。
また、英語が公用語であるという点でも、グローバル経済では大きなメリットです。人件費も安いことから、近年ではアメリカ企業のBPO(バックオフィスやコールセンターの委託業務)も盛んです。フィリピンのGDPはまだ一次産業の比率が高い農業国で、現状ではBPOや出稼ぎ労働者の送金で経常黒字を生んでいますが、国内消費(内需拡大)に繋げられるかが、今後の経済発展のポイントになります。
フィリピンの人口推移と将来予測まとめ
・2015年に1億人を越え、2030年までに日本と逆転する
・20世紀後半に出生率が「5」を超えていた事が増加の要因
・首都マニラ周辺の都市人口は世界でも屈指の多さ
日本人からは「近くて縁遠い国」であるフィリピンですが、長期的に見れば人口増加という最大の経済メリットを有しているので、世界の投資家から有望視されている国なのです。確かに政局不安が長年続いている地政学リスクの高い国ですが、日本企業は中国偏向を改め、もっとフィリピンの潜在力に賭ける戦略を取っても良いのではないでしょうか?