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社会の授業では「日本は貿易立国だ」という刷り込みがあります。確かに高度経済成長期の日本は、外国から原油や鉄鉱石などを輸入し、国内で自動車や家電製品などを作り、それを輸出して国の経済を発展させてきたので、貿易立国というイメージは強いのも分かります。しかし実は、日本は明らかに内需依存型の経済であり、貿易立国ではないのです。
以下は、2013年時点の世界の主要国の貿易依存度を比較した表です。
主要国の貿易依存度 | ||
国名 | 輸出 | 輸入 |
シンガポール | 138.7% | 126.1% |
マレーシア | 73.1 | 65.9 |
オランダ | 66.5 | 59.5 |
タイ | 53.5 | 59.4 |
サウジアラビア | 50.2 | 21.9 |
韓国 | 42.9 | 39.5 |
ドイツ | 36.9 | 32.0 |
スイス | 31.7 | 28.0 |
メキシコ | 30.2 | 30.3 |
ロシア | 25.1 | 15.0 |
カナダ | 24.9 | 25.1 |
中国 | 24.1 | 21.2 |
フランス | 20.2 | 23.9 |
イギリス | 17.8 | 24.1 |
オーストラリア | 16.5 | 15.2 |
インド | 16.2 | 24.0 |
日本 | 14.6 | 17.0 |
ブラジル | 10.8 | 10.9 |
アメリカ | 9.4 | 13.9 |
※データソース;世界国勢図会・第26版(2015/16)
貿易依存度とは、国民総生産(GDP)に対する輸出および輸入額の比率の事です。貿易依存度が低ければ、内需が多い、自給自足が出来ている国だという事になります。日本の貿易依存度は輸出が14.6%で輸入が17.0%と、諸外国と比較してかなり低い水準です。日本より低い国はブラジルとアメリカ位しかありません。つまり、日本は貿易依存度が低い国であり、貿易立国というのは明らかな誤りだと言えます。
当サイトでも散々紹介していますが、近年の世界の家電市場は、中国や韓国などのアジア企業の製品のシェアが高くなっています。しかし日本市場では、携帯電話やテレビや冷蔵庫など多くの商品が国内メーカー製が上位を占めており、ガラパゴス市場と揶揄されています。日本がガラパゴス市場化しがちな理由が、この貿易依存度が低い事です。
★関連ページ;世界と日本のスマホ機種シェア比較、 世界市場と日本での薄型テレビのシェア比較、冷蔵庫の世界市場と日本での販売シェア比較
日本の人口は1億2000万人以上と規模が大きく、国内だけで十分な売上が見込める事から、企業のマーケティング戦略も内向きになりがちで、結果的に日本だけの独自仕様=ガラパゴス製品が生まれるのです。
アメリカは世界で最も貿易依存度が低い国ですが、実は日本と同じくガラパゴス化が激しい国でもあるのです。例えば「ピックアップトラック」という巨大な自動車は、アメリカ国内以外ではほぼ見かけない仕様の商品です。また、最も人気の高いスポーツが(世界で全く普及していない)アメリカンフットボールだったり、FPS(銃撃戦ゲーム)が子供達に大人気だったり、未だにヤードポンド法を頑なに使い続けていたり・・・等と枚挙に暇がないです。
このようなアメリカ独自の文化が出来るのは、人口3億人でGDP世界一という巨大な内需があることが理由です。しかもアメリカ人は、自分達の文化を「グローバルスタンダード」だと思い込んで自慢げにしているから、余計にタチが悪いです。
中国は輸出大国=貿易で稼いでいる国だと思われがちですが、実際には輸出依存度は24.1%でそれほど高くありません。その理由は、中国が13億人もの人口による内需があること・・・ではなく、実は政府が公共事業を行って経済を支えているからです。
中国は、GDPの4割が総固定資本形成(建物や道路等を作る公共事業)で、個人消費は30%台しかありません。そして公共事業の中身も、昭和末期の日本以上に無駄な設備投資が多く、地方には高層ビルや道路があっても人っ子一人居ない「ゴーストタウン」も増えています。中国のGDPは、それ自体が偽装されているのでは?という推測も多いですが、その中身も健全とは言いがたいのです。
★関連ページ;中国の実質GDP成長率の長期推移
そして韓国は、輸出も輸入も貿易依存度が約40%と高く、外需に依存した経済構造です。韓国は日本同様エネルギー資源に乏しいのですが、加えて人口が5千万人程度と少なく、しかも先進国ほど豊かでもないので、どうしても外需に頼らざるを得ないのです。そして頼みの輸出も、サムスンや現代などの巨大財閥企業に偏っており、健全とは言えない構造です。
世界各国の貿易依存度比較まとめ
・日本の貿易依存度は世界と比較して低く、貿易立国ではない!
・しかし内需に依存しがちなので、ガラパゴス市場化している
・アメリカや中国も貿易依存度が低く、逆に韓国は外需頼みの経済
最も貿易依存度が大きい国はシンガポールで、輸出・輸入共に100%を超えています。シンガポールの面積は719.1平方kmで東京都の3分の1程度、人口も約560万人と北海道と同規模です。これだけ国が小さいと、内需だけでは経済発展が難しく、かつ食料やエネルギーなどの自給率がほぼゼロなので、結果として貿易依存度が極めて高くなっているのです。