HOME > 国と地域 > 中国の実質GDP成長率の長期推移
アメリカ合衆国は第二次世界大戦以降、名実ともに世界経済の中心で居続けています。そんなアメリカの実質GDP成長率(経済成長率)を日本と比較してみた、超長期(過去50年間)の推移グラフです。
実質GDP成長率とは、実際の国内総生産の増加量から、物価変動を除いた数値です。従って、インフレだろうがデフレだろうが関係なく、その国の真の経済成長を把握できます。最新データとなる2017年、アメリカは年率2.7%のGDP成長率でした(マウスオーバーすれば、年と成長率の数値が表示されます)。
※データ出典;Google Public Data(出所;世界銀行統計)
アメリカは過去50年以上に渡り、イギリスやフランスなどの他の先進国よりも高いGDP成長率を記録していますが、何度か大きな景気の谷も経験しています。1974〜75年は第一次オイルショック、1980・82年は第二次オイルショック、1991年には湾岸戦争の影響で、マイナス成長に陥っています。アメリカは、近年はシェール革命の影響でエネルギー自給率が90%を超えていますが、当時は大量に石油を輸入していたので、中東情勢に景気が振り回される事が多かったのです。
ところが1990年代後半には状況が一変、4%台という高いGDP成長率を記録しました。その原動力は、クリントン政権による日本イジメ〜貿易赤字の縮小と、IT革命による生産性の向上がありました。マイクロソフトが「Windows95」を発売したことで、パソコンが中小企業や一般家庭レベルまで普及したこと、そしてインターネット時代の幕開けが、代表例です。
しかし2001年には、GDP成長率が1%を割る水準にまで低下しました。原因の一つは「9.11テロ」の影響ですが、もう一つはITバブルの崩壊です。
90年代後半には、アマゾンやシスコや米ヤフーなど、IT企業の株価が過剰人気で超絶的な高騰を引き起こしました。マイクロソフトなどと違って、実態を伴っていない株価高騰(株価収益率で100倍以上!)であり、完全に虚構=バブルだったのです。
日本の1980年代のバブル崩壊と異なり、アメリカはすぐに景気回復に向かいましたが、原動力には「不動産の証券化」という、危険な金融システムも含まれていました。その代表が、月収20万円程度の下流家庭でも、庭付き一戸建ての家が買える「サブプライムローン」でした。
この行きすぎた金融システムが、2008年の通称「リーマンショック」を起こし、本当に世界景気を大破綻させる事になったのです。2009年のアメリカは、世界大恐慌(1929年)以降で最悪となる、マイナス2.8%のGDP成長率を記録しました。
※ちなみに世界大恐慌期の1929〜33年の4年間に、アメリカの実質GDP成長率は-26.5%でした。
その後アメリカは、オバマ・トランプと色んな意味で歴史的な大統領を生むなど激変しましたが、GDP成長率は2%台と低水準で推移しています。シェール革命・人口知能・バイオテクノロジー・宇宙開発・FANGなど様々なテーマが叫ばれましたが、話題先行で大した成果は生んでおらず、株価もバブルにすらなっていません。
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年1月6日 |
20世紀以降のアメリカ経済は、ダイナミックな成長と景気後退を繰り返してきましたが、2010年台はリーマンショックの悪影響が削がれたにも関わらず、低成長が続いています。
日本やヨーロッパなど他の先進国と違い、アメリカでは人口が増えており、2050年頃までは増加傾向が続くと予測されています(⇒アメリカの将来の人口推移予測)。本来なら人口増加はGDP成長率にはプラス影響なのですが、その原動力はアメリカは中南米・ヒスパニック系の移民であり、彼らは貧困層なので景気拡大にはあまり影響しないという問題があります。
アメリカの実質GDP成長率の長期推移まとめ
・ITバブル崩壊やリーマンショックなど、大きな景気後退もあった
・長期的には景気拡大を続けて、成長率は他の先進国より高かった
・だが2010年代からは、GDP成長率が明らかに鈍化している
世界経済の中心であり、技術革新の最前線であるアメリカの成長が止まってきていることは、世界にとって大きな懸念材料です。2010年代は単なる長い踊り場なのか?それともこのあたりが人類〜資本主義経済の限界点と言うことなのでしょうか?