HOME > 国と地域 > 世界各国の幸福度と豊かさの相関
当サイトでは、国連とその他の調査機関による、世界各国の幸福度ランキングの比較を紹介しています。実はこのデータには更なる事実が隠されており、国民が幸福を感じる度合いと、国の経済的な豊かさ(GDP)とは、あまり相関関係が無いのです。以下で紹介するグラフは、WIN/GIAの幸福度調査(2017年)のランキングと、一人当たりGDPを比較して、その相関を記したものです。
※WIN/GIAはスイスの調査機関で、毎年「幸福度調査」を発表しています。幸福度調査は、世界各国(2017年は55カ国が対象)の国民に対して、自分の生活がどのぐらい幸せかを5段階で評価してもらうアンケート調査を行い、その結果を基に幸福度を算出するというものです。
順位 | 国名 | 幸福度 | 一人当たりGDP |
1 | フィジー | 92% | 5761ドル |
2 | コロンビア | 87 | 6237 |
3 | フィリピン | 84 | 3022 |
4 | メキシコ | 82 | 9249 |
5 | ベトナム | 77 | 2306 |
18 | 日本 | 54 | 38550 |
25 | ロシア | 50 | 10248 |
25 | アメリカ | 50 | 59495 |
35 | フランス | 43 | 39673 |
37 | 韓国 | 42 | 29730 |
37 | イギリス | 42 | 38846 |
41 | ドイツ | 38 | 44184 |
50 | ブラジル | 28 | 10019 |
55 | イラン | 5 | 5252 |
幸福度ランキング1位のフィジーは、南太平洋の島国です。フィジーには「ケレケレ」という文化があり、国民全員が助け合う生活習慣があります。このフィジーをはじめ、メキシコやフィリピン・ベトナムなど、ランキングの上位5カ国はいずれも新興国・途上国であり、一人当たりGDPは1万ドルに満たないです。しかし金銭的に豊かではなくとも、国民の大多数は幸福に感じているようです。
こうした途上国と比較して、経済力=一人当たりGDPが高い先進国は、国民がさほど裕福に感じていない傾向があります。例えば、日本の一人当たりGDPは38550ドルとフィジーやメキシコなどより遙かに高い数字ですが、幸福度は54%でランキング18位とあまり高くないです。
また、アメリカの一人当たりGDPは約6万ドルと主要先進国としてはトップですが、幸福度については50%でランキングは25位に過ぎません。イギリスやフランス・ドイツなどヨーロッパ諸国も、日米と大体同じような位置にいます。
上記グラフのように、一人当たりGDPと幸福度が、共に凄く高い国は存在しません。むしろ、一人当たりGDPの少ない貧しい国の方が、国民は幸福に感じているケースもあります。
先進国ではモノが溢れて安全も確保できているので、国民が豊かさに麻痺しており、幸福を感じるハードルが高くなっているのです。一方で新興国では、何もかもが満たされていないのが当然の生活なので、明石家さんまの「生きているだけで丸儲け」のような精神構造になって、少しの豊かさでも幸福を感じやすいのでしょう。
とはいえ『一人当たりGDPが高いのに幸福度がとても低い』という国も存在しないので、国が豊かである事=最低限の幸福感は得られるという事実は間違いないでしょう。
ちなみに、上記のランキングには入っていませんが、南アジアの小国であるブータンは、国民の大多数が幸福を感じている国として知られています。ブータンの一人当たりGDPは2886ドルと、日本やフランスなどの10分の1以下ですが、国民の97パーセントが幸福と感じていると回答しています(同国の2005年国勢調査より)。
ブータンは国の発展度合いを図る指標として、GNH(Gross National Happiness=国民総幸福量)を取り入れた世界初の国です。1972年、当時のブータン国王だったジグメ・シンゲ・ワンチュクは、一般的な指標であるGNP(国民総生産)ではなく、精神的な豊かさであるGNHを重視する方針を打ち出しました。ブータンのGNHは「公正で公平な社会経済発展」「文化の保全および推進」「環境保護」「良い統治」の4つの柱をコンセプトに掲げています。こうした政策のおかげで、ブータンでは医療費や教育費は無料となっており、金銭的に豊かでなくとも最低限の安全・安心は保障された国なのです。
そのうえ近年のブータンは、急速に近代化が進んでいます。インターネット普及率は、2016年で約50%、携帯電話はおよそ90%です。このように、国民生活も徐々に豊かになっている事から、ブータン国民に幸福に感じる人が多くなっている理由です。
ただしブータンは失業率が高く、犯罪率やアルコール依存患者が増加傾向にあるなど「実際にはあまり幸福な国とは言えない」と断罪する専門家も居ます。ネットの普及により、モノが溢れた先進国の生活に憧れる若者も増えている〜との口コミも聞かれます。
世界各国の幸福度と豊かさ(一人当たりGDP)の相関まとめ
・幸福度のランキングと豊かさに直接的な相関関係はない
・一部の途上国では、幸福度の割合が先進国よりも高い
・ブータンは国民が幸福な国として有名だが、実情は変わりつつある
よく知られるように、楽天家の人ほど毎日楽しく暮らしています。一方で、社会的に成功して大金持ちになった実業家の中にも、幸せを感じるどころか常に失敗・没落を恐れて気が休まらないという人も居ます。貧乏でも暢気に暮らせる人々の方が、実は勝ち組なのかも知れません。